迷宮都市ルナ(2ー7)
矢を補給して鍛冶屋さんを出ると、溜め息をする。
結局矢を200本買っていて、手もとに50本を残せた。
残りの150本を言うまでもなく【アイテムボックス】に仕舞ったのだ。
もうちょっとお金があれば新しい装備まで買っていたが、さすがにそんな余裕はなかった。
……かといって今から迷宮に潜ってレベル上げついでに魔石を集めることにした。
もともと魔石を集めてギルドで交換するつもりだったので、別に新しい装備を買ったのはよかったじゃない?
と、今さら思っていても、引き返すつもりもない。
あとでもっとお金を手に入れたら戻って買い換えるとそう内心で決めると、隣に立っている猫耳少女であるセナに声をかける。
「さてさて。準備もできたし、そろそろ【迷宮入口】に向かって潜るとしようか」
僕が言うと、セナは元気よく頷いた。
「うん! 頑張りましょう、リーダーさん」
リ……リーダーさん?
っていうかたしかにザナックスと話していたときにもリーダーって呼んでいたな、セナが僕のことを。
ま、まあパーティーを組むことにしたのは所詮僕の方だし、かといってそもそもセナがそんなことを訊いてこなかったらこんなことにはならなかったと思うが、まあいいや。
セナが治療魔法しか使えないとはいえ、ただ隣に仲間がいることを知るのはなんとか一安心はできる。
正直に言って1人で迷宮に入るのはどうかなとは思っていたが、今となってはあんまり気にする必要がなくなった。
【迷宮入口】は鍛冶屋さんからそれほど遠くない。
実質、道を後戻りすれば【冒険者ギルド】のすぐ隣には【迷宮入口】があるので簡単に見つけられる。
問題は迷宮に入っていたら、どんな魔物が潜んでいるか、れを知らないことなのだが、きっと迷宮に入ってから知るようになるだろう。
すなわちそんなことも気にする必要はないというわけだ。
とりあえず気を取り直そう。
今、集中すべきは今から迷宮にいるその魔物達の討伐だ。
1階にいる魔物を討伐しながらレベルを上げるついでに魔石を集める。
すると討伐をして魔石を集めていたらそうだな。
……ギルドに新しいパーティーの誕生を報告するのがベストか。
ついでに魔石を交換してお金を手に入れること。
そしてそのお金を使ってどこかの宿屋で部屋を借りて、明日に備えて寝るとしようか。
もちろんそれは、【冒険者ギルド】でお祝いをした後でのことなんだ。
そう決めて頷くと、視線をセナに投げる。
するとセナは、
「ふんふんふん!ふんふんふん!ふんふんふん!ふんふんふん――」
何故か目を閉じたまま鼻歌を歌っている。
……セナを無視して歩き出すことにした。
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