迷宮都市ルナ(2ー3)


 ちなみに、授かった職業は魔導射手である。

 矢を【風の精霊】で付与したときを思い出すと、自分から言わせれれば、魔法と弓術を専門にするエルフの自分には極めて強烈なコンビだと思う。


 受付嬢が背中を見せた隙で【アイテムボックス】に冒険者カードを仕舞った僕は、ふと、あることを思い出した。

 それは【魔の森】で集めた魔石のことだ。

 確かに大して集めていないが、少しでもお金を手に入れたらいいかな、と思ってて受付嬢に報告することにした。

 【アイテムボックス】から魔石が入った小袋を取り出して、受付嬢に話しかける。


「えっと。魔石も集めてきましたが、交換してもいいですか?」


 すると受付嬢は、僕の質問を聞いていたらまたこっちに振り向いた。

 冒険者カードをもらってすぐに依頼を受けるためにボードへ向かうかと思われたか、振り向いて僕がまだいることに気づいたら、驚愕しているような表情をうかべた。


「魔石を集めてきましたか?」


 と、受付嬢が尋ねてくる。

 どうしてそもそもそんなびっくりしているような表情をしているかわからないが、受付嬢の質問を聞いて素直に頷く。


「あ、はい。このバッグに魔石は20個あります。この街へ向かっている途中で出くわした魔物を討伐して取ってきました」


 そう言って受付嬢が見ていないうちに【アイテムボックス】から取り出した魔石が入った小袋をカウンターの上に乗せた。

 そして受付嬢はしばらくカウンターの上に乗せられた袋を見ていると、やがて小袋を手に取って紐を解いてその中を見て確認する。

 すると見ているものは確かに魔石であることを確認していたら、受付嬢は僕に向かってうなずき、ほほ笑みかけた。


「分かりました。じゃ、少々お待ちくださいませ。鑑定してきますので」


 言うと、小袋を手に早足でカウンターの後ろの部屋に入る。


 ……すると待つこと三分後。


 部屋から出て、こっちへと向かう受付嬢。

 その手には僕がさっき渡した小袋を持っている。


「待たせて申し訳ないです。こちらさっき渡された魔石の交換料となります。ずばり金貨4が入ってます。お受け取りください」


 そう言って小袋を僕に差し出してくる受付嬢。

 僕は差し出された小袋を自分の手に取って小さく会釈すると、お礼を言う。


「ありがどうございます」


 と。

 すると眩しい笑顔で、受付嬢が、

 

「いえいえ。問題ないですよ。仕事ですから」


 そう言い返してくる。

 ……うん、可愛い。

 受付嬢を見て、ただそれしか言いようがない僕がいた。

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