転生先は森の中(1-7)
あけましておめでとうございます。
全然更新しなくて申し訳ありません。ちょっとね、スランプに陥ってしまいましたね。まあでも、今は前と比べるとだいぶ良くなったので、お気になさらず。
それはさておき、
本日をもって投稿を再開しようと思っております。一応新作も書いてますので、みなさんはもし良かったら、アップしたらそちらも見ていただけると嬉しいです。
あと、言い忘れる前に、ちょっと発表していきたいことがあります。
今現在、異世界賢者の59話は進行中です。
……はい。
まあ、現実のこともあっていつ投稿するかは未定ですけど、必ず近いうちに更新します。
そちらも見ていただけると…
今年もよろしくおねがいたします。
────
──そして翌朝。
鳥の鳴き声に、僕は目を覚ました。
上半身を起こし、伸びをする。
すると寝ぼけ眼を手の甲で擦りながら、周囲を見回す。
目の前に広がっているのは、大自然。
いくつかの木々がそびえ立っている森風景。
しばらく森の風景を眺めると、やっと昨日のことを思い出した。
あそうか。
そういえば異世界に転生したな。
つまりやっぱ夢じゃなかった。
これはこれは、喜ばしいことじゃねぇ?
これからどうやって生きていくのかちゃんと決めないといけないが、そんなことより、
グーーーーー
まずは腹を満たさないとな。
出発する前に朝ごはんを取ることにした。
まだ寝袋の上に座ったまま、【アイテムボックス】を開いてその中から数個の木の実を取り出す。
木の実より腹にたまる朝食を取るべきだともう知っているが、やっぱこんな朝っぱらから火を起こしたくないのでとりあえず木の実で空腹を紛らわすことにした。
数個の木の実を食い尽くした後、昨日寝る前に取り外した弓矢を再び装備すると、一生懸命作っていた寝袋を【アイテムボックス】にしまう。
それを終え、次は近くの池に行って、顔を洗う。
冷たい。
一気に眠気が吹き飛んだ。
風呂に入ったのはいつだったのだろ?
悪臭がないだけましか。
っていうかさ、今何時。
こんなに早く起きるもんじゃなかった気がするが……
まあ、別の世界だからいいか。
そんなことより、そろそろ行くとましょうか。
確か森の出入口は……あそこか。
現地から約500メートルほど離れている北の方角から、この森とは全く別の何かを感じ取れた。
その何かはなんだか知らないが、目印はあれしかないので、しかたなく辿ることにした。
僕は歩き出す。
目指しているのは、この森の出入口だ。
◇◇
歩くこと2時間。
「きゃあああ!!!」
しばらく進むと、突然悲鳴が聞こえた。
現地から20mほど離れたところから。
割と近い。
悲鳴がした方向に向かってしばらく歩くと、いい所まで近づいたら近くの木の後ろに身を隠す。
黙々と、様子を窺う。
そこには3人がいる。
2人は冒険者のような服装を着ており、もう1人は商人らしき服装を身にまとっている。
冒険者であろう1人の人物は血を流して倒れていて、もう1人は倒れている仲間の前で守るように立っている。
その手には剣を構えているのだ。
視線を少し動かすと、次に商人らしき男性を目で捉える。
商人らしき人物は、馬車の後ろに身を隠しているのだ。
そして、3人を睨み付ける、黒熊型の魔物。
どうやら彼らは熊に襲撃を受けているようだな。
まあ、いまの自分のシチュエーションを冷静に考えると、そりゃダメ元で悲鳴をあげるだろ。
元々はじっくり様子を見てから対応を考えるつもりだったが……そう言っていられる状況じゃなさそうな。
倒れている冒険者の傷はかなり深いようだし、命に別状があるのかもしれない。
仲間だけじゃなくて商人らしき人物も守ろうとしているもう1人の冒険者も肩のあたりに傷を負っている。
もはや手段を選べる状況ではない。
幸い、誰もがまだ僕の存在に気づいていなさそうなので、ある意味で有利なのでは?
──まあ、先手必勝ってことで、背中から弓を取り外し、敵からの距離を頭の中で測る。
ざっと見積もると、僅かな10フィートほど離れている。
苦労もせず簡単に仕留められる距離だ。
と、そんなことを考えつつ矢筒から矢を1本取り出して、弦に番える。
やっぱ効率を上げるために矢先に毒を塗れた方がいいかも。
しかし残念ながら毒など持っていない。
作ったこともない。
確実に獲物を仕留めるには、【風の精霊】を使って矢を風の魔法で纏うことしかないな。
そうすることによって、矢の貫通力が一気に上がる。
ほとんどのものを一撃で片付けられるぐらいの力を得る。
実質、矢を魔法で付与しているだけだけどな。
息を整え、魔力を集める。
するといい感じに魔力を集めると、次に魔力の属性を風に変え、唱え始める。
「【風の精霊】」
と。
その直後、僕の周りで風が渦巻いて、一気に強くなる。
すると自らの魔力でいっぱいになったその風に集中して矢先を纏うように操る。
これをやるのは初めてなので、制御するのがかなり難しい。
もっと集中しないと、高密度までに圧縮された風が不安定化してしまう。
その場合だと、極端に圧縮された風力が解放を求めて爆発する。
そしてその原点に最も近い自分が爆発に巻き込まれて死んでしまうに違いない。
どうやらこの世界の僕が身につけようとしていたスキルのようだが、あまりに危険のため忘れ去られる始末。
矢が1本番えられた弓を上げ、獲物に狙いを定める。
狙うのはもちろん、頭部。
ある意味で、毒が作らなくていいかも。
肉を穢すのを避けられるし。
と、そんなくだらないことを考えながら矢を放つ。
ヒユッ、という音とともに、矢が飛んでいき、見事に熊型の魔物の頭部に命中……と思いきや頭部をすり抜けるように貫通し、最後に地面に突き刺さる。
間違いなくそれは【風の精霊】によって強化された結果であろう。
断末魔を上げることすらなく、熊型の魔物が倒れて、呆気なく死んだ。
そしてそれを見た3人はどこか安心したような顔をした。
しかし決してそのガードを緩むことはない。
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