転生先は森の中(1-5)

そして歩くこと5分。

僕はやっと【索敵】で魔物の魔力反応が拾われた位置に着いた。

──もっと正確に言えば、魔物の位置から約100メートルほど離れた茂みで身を隠しているところだ。


【鷹の目】を発動し、ターゲットを観察する。


【鷹の目】というのは、僕が取得している≪ショットスキル≫のひとつだ。

このスキルが発動中は視力が向上するだけでなく、世界がまるでスローモーションで動いているように知覚される。


五感が研ぎ澄まされるような、そんな感覚だ。


「【鑑定】」


そう、ターゲットを真っ直ぐ見つめながら【鑑定】を発動。


――――――――――――――――――――――――――――――――

グレイウルフ(下位級)

RANK


HP 50/50

MP 0/0

STR:25

INT:1

AGI:40

DEX:0

スキル:

――――――――――――――――――――――――――――――――


ふむ。

なるほど、グレイウルフと呼ばれているのか。


ウルフって、オオカミのことだろう。

僕の位置から100mほど離れたところにいるオオカミをじっと見つめて…うん、確かに前世のオオカミと見た目はまんまだ。


ということは、恐らくその行動パターンもオオカミのものだろう。

だったら、かなり厄介な相手になりそうだ。

とはいえ、ひとつ気になることがあった。


ネットで見た情報によれば、オオカミは普段群れで行動することが多いらしい。

しかし、どこを見ても群れの形跡が見当たらない。


つまり、どういうことだ?

もしかして、この世のオオカミは群れで行動しない個体なのか?


知らないが、せっかく群れからはぐれたオオカミを…いや、この世ではグレイウルフと呼ばれているのか。

せっかく群れからはぐれた“グレイウルフ”を見つけたので、この状況を活かさない手はないだろう。

後で後悔しないためにも、ここで仕留めておくべきだ。


と、そんなことを考えつつ、僕は弓の弦に矢を番えて、グレイウルフに狙いを定める。


深呼吸をする。

すると、さらに集中力を高めるように、僕は目を細めて一旦息を殺した。


──弦を引き、矢を手から離す。


キリリリリ…シュッ。


という音とともに、矢が空気を切り裂きつつ飛んでいき、見事にグレイウルフの頭部に突き刺さる。

その瞬間、血飛沫が飛び散った。


狙い通りに矢が頭に命中し、獲物である1体のオオカミ型の魔物は痛みに悲鳴を上げる。

ぶるっと震えてから地面に横たわり、1度痙攣したように動いたが、すでに動かなくなった。


ピロン、ピロンという音とともに、目の前に見覚えのある画面が二つ現れる。


ひとつは魔物を倒したときに出てくる経験値画面。


――――――――――――――――――――――――――――――――

【グレイウルフ(下位級)を倒しました!】

【経験値135を獲得しました!】

――――――――――――――――――――――――――――――――


そしてもうひとつはレベルアップ画面だ。


――――――――――――――――――――――――――――――――


【レベルが上がりました! 2→3】

HP:55→55

MP:500→505


筋力:15→16〈+5〉

耐久:10→11〈+5〉

敏捷:30→40〈+5〉

知能:30→35〈+5〉

器用:30→40〈+5〉

幸運:20→25〈+5〉


STPを10個増加しました。

SKPを10個増加しました。


――――――――――――――――――――――――――――――――


これで魔石を1個手に入れた。

この調子で狩り続ければ、夜になる前に魔石を10個手に入れられるだろう。


と、そんなことを考えつつ弓を背中に戻す。

そして【索敵】で周囲に魔物がいないことを確認してから、倒したオオカミ型の魔物の死体を回収するために、そちらへと歩き始める。


太陽はもう沈みつつあり、もう少しで夜になるだろう。

あのイノシシ型の魔物を解体していると、だいぶ時間を浪費してしまったな。


でもそれは当然のことだ。

的確に解体を行わなかったら、未だに死の淵に立たされていたかもしれない。


あのときは、時間よりも身の安全を優先していた。

時として忍耐は美徳だ。

──自分に言わせれば、正しい判断だった。


地面で冷えている死体がある場所に着く。

着いたら素早く頭部に突き刺さった矢を回収し、その死体を拾って【アイテムボックス】にしまう。

そのあと、僕は溜息をついて再び【索敵】を発動する。


少なくとも夜になるまでに魔石を10個回収したいな…と考えながら次のターゲットを見つける。


ここから右へ、約150メートルほど離れた場所で魔物の気配を感じた。


よし、行くぞ。


そしてその魔物の魔力にロックオンして、僕はそこへと歩き出す。


──そのまま次々と魔物を倒しているうちに、夜になる前に何と、20個の魔石を集めることができた。

どうやら思ったよりも時間があったようだ。

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