Y イライジャ(相手が無機物)

「イライジャ、さすがにこれはいかん。ダニールとの婚約など認められない、破棄だ!」


 私は相棒兼私的なパートナーでもあるダニールとの関係を公的なものにしたかった。

 だから保護者的立場の上司に相談した、のだが。


「何故駄目なのですか! 

 私達は様々な困難をくぐり抜け、この都市の安全を守ってきたパートナーです!」

「それは判っとる! 

 だがなイライジャ、判ってるだろう! 

 ダニールはロボットだ!」


 ぜえぜえはあはあ、とデスクの前での押し問答が繰り広げられる。


「どうしても駄目ですか」

「考え直せ、どれだけ我々そっくりでも、あれは機械なんだぞ?」

「百も承知です。私はそんなダニールと共に生死をくぐり抜けてきたからこそ……!」

「イライジャ、止しましょう」

「だがダニール」

「私の中の三原則が揺らいでいます。

 このままではコンフリクトを起こし……」

「よし、じゃあいい。形など。ダニール、行くぞ!」


 唖然とする上司の目の前から、二人は手に手を取って去っていった。



 R・ダニール・オリボーとイライジャ・ペイリの駆け落ちは彼等のタレコミによりニュースとして世界を駆け巡った。

 彼等の所属する警察の分署がそれで多大な被害を被ったことは言うまでもない。

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