第2話「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!!」
2話
「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!! 公爵家に借金があるとか父がフィルタ侯爵に土下座したなど全てお前のでっち上げだ!」
レイモンド様が叫びだしました。理解出来る量を越えると叫びだす、レイモンド様の悪い癖ですね。
「俺が不貞を働いたから婚約の破棄が成立したというが証拠はないのだろう!? ミランダに嫉妬し嫌がらせをしておいて、俺の不貞まで偽装するとはとんでもない女だ!」
ミランダ様という不貞行為の証拠の腰に手を回し、二人揃って昨日と同じ学生服を着て学園に来ておいて、よくそんなことが言えますね。
「いえレイモンド様が不貞を働いた証拠はちゃんとあります、女王陛下が影を貸してくださいましたから」
「なっ、なに……!」
【影】という言葉を聞いてレイモンド様は、ビクリと肩を震わせた。
「嘘だ! 王室がそんな簡単に影を貸すわけが……!」
「本当のことです。先程も申し上げたように私の母は女王陛下と学生時代からの親友、私個人も女王陛下に気に入られておりましたので、快く貸してくださいました」
にっこりと笑って伝えるとレイモンド様は恐怖におののいていた。
「影の方たちは優秀で、レイモンド様が不貞を働いた証拠をすぐに集めて下さいましたよ。それからレイモンド様の不貞行為以外の悪事の証拠も見つけて来て下さいましたよ」
レイモンド様とミランダ様の顔が青白く変わる。レイモンド様に至っては体が小刻みに震えている。どうやら身に覚えがあるようですね。
「レイモンド様が私とのデートを『母の体調が悪い』と言って当日キャンセルした日、夜会のエスコートを直前になって『足を挫いた』と言って破約した日、一ヶ月前から決まっていた父との会食を『急用が出来た』とすっぽかした日、それら全ての日に同じ女性と宿屋に泊まっていたことは分かっています」
その女性というのはミランダ様なのですが。
「私の誕生日に贈り物をしたことは一度もなく、そのくせご自身の誕生日には『最高級品を寄越せ!』と恫喝。私の贈った万年筆が気に入らず、私の部屋に無断で侵入し、アメジストのイヤリングを持ち出しましたね」
影の方たちがレイモンド様がアメジストのイヤリングを盗み出すところを見ていました。
イヤリングが無くなったのは、レイモンド様がフィルタ家の夕食会に参加した直後でした。珍しく夕食会に参加したと思ったら、盗みが目的だったのですね。
あのイヤリングは父が仕事で隣国に行ったときのお土産でしたのに。
「えーあのイヤリング盗品だったの?」
「馬鹿! 余計な事を言うな!」
ミランダ様の言葉をレイモンド様が遮る。
盗んだ物を浮気相手に贈っていたとは、どこまでも性根が腐ってますね。
「婚約者の家の物を俺がどうしようと勝手だろ!」
すごい理屈ですね、婚約者といえど結婚前は他人。その家の物を盗めば泥棒です。
「他にもありますよ。放課後私の机をナイフで傷つけていたこと、私の教科書とノートを破り、お弁当に虫を入れ、鞄を池に投げ捨て、皆が見ていないところで罵詈雑言を吐き私の自尊心を傷つけた」
食堂内がざわつく。皆さんレイモンド様がそこまで卑劣な人だとは知らなかったようですね。
「レイモンド様の行った、不貞行為、器物損壊、窃盗、暴言、その他数々のパワハラ行為は女王陛下が貸して下さった影が全て目撃しております」
器物損壊と窃盗は犯罪です。
「でたらめだ……! 俺はそんなことしてない……!」
いや証人がいるって言いましたよね、何を聞いていたのでしょうか? 阿呆なんですか?
「影が全て見ておりました、言い逃れはできません」
「くっ……!」
レイモンド様は眉根を寄せ唇を噛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます