第3話「慰謝料」
3話
「女王陛下に相談するなんて卑怯だ! 父や俺に言ってくれれば態度を改めたのに……!」
「女王陛下に相談する前に、イエーガー公爵にもレイモンド様が浮気をしていること、レイモンド様に言葉の暴力を振るわれていること、陰で陰湿な嫌がらせを受けていることをお伝えしました。
ですがイエーガー公爵は『その程度のことは大目に見てくれ、レイモンドは好きな子に意地悪をしているだけだ。若気の至りだ、結婚したら落ち着くだろう。レイモンドが浮気をしたというが確たる証拠はあるのかね? 少しばかり学園で女の子と仲良くしただけで不貞行為と騒ぐなんてあんまりだ、レイモンドが気の毒だよ』とおっしゃり取り合っていただけませんでした」
ご自分から「お嬢さんを息子の婚約者にしてください!」と頭を下げておいて喉元過ぎたら塩対応。息子の教育も放棄。
私もフィルタ侯爵家も随分と舐められたものです。
「レイモンド様にも行いを改めてくださるように再三申し上げましたよ。ですがそのたびに『侯爵家の娘風情を貰ってやるんだ! 口を慎め!』と怒鳴り散らすだけでしたよね?」
「うぐっ……!」
「ですから私は母に相談しました。父に相談してもイエーガー公爵の泣き落としに負けるのが目に見えていましたから」
父は悪い人ではないし、商才もあるのですが泣き落としに弱いのが玉に瑕。
いつでもどこでもスライディング土下座が出来るイエーガー公爵も相当ですが。
「だから母は女王陛下に相談し、影をお借りしレイモンド様の不貞の証拠を集めることにしたのです。女王様はイエーガー公爵とレイモンド様の行いを知って大変ご立腹でしたので、快く影を貸してくださいました」
女王陛下が「どうせ集めるのならぐうの音も出ないくらい完璧な証拠を揃えて叩き潰しておしまいなさい」とおっしゃっていたのは内緒です。
「そうそうレイモンド様に伝えておきますね、フィルタ侯爵家と母の実家のシュティーア公爵家は今後一切イエーガー公爵家といかなる取引もいたしません」
イエーガー公爵は官吏の仕事には就いていなかったので、収入は農地からの税金と商会の運営資金のみ。
イエーガー公爵の領地はここ数年不作が続いておりますし、商会の運営はフィルタ侯爵家からの援助でやっと出来ている状態。
フィルタ侯爵家とシュティーア公爵家と取り引きが出来なくなったら倒産するでしょうね。
「フィルタ侯爵家がイエーガー公爵家にお貸ししたお金は速やかに返済してくださいね、借金の返済猶予は一カ月です」
領地と屋敷を売れば支払えるでしょう。
「それとは別にレイモンド様の私に対して行った不貞行為、パワハラ行為、器物損壊、窃盗に対する慰謝料はしっかりと請求させていただきましたのであしからず」
今頃イエーガー公爵は家財道具や家屋敷を売りに出していることでしょう。
「そんな……!」
レイモンド様は力なく崩れ落ち、床に膝を突いた。
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