★同高(おなこう)の2人

※ この話はカクヨム用に新たに執筆しっぴつしたものです。


※1 棒銀ぼうぎん アマチュアがよく使う将棋の戦法


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俺  主人公 大学2年

ミア 中一女子 金髪ハーフ

(今回は名前だけ)


***


 以前、一緒に合コンに行った、同高おなこうで、アマ2段の将棋君に俺は電話した。


「おお、久しぶり。また、合コンのお誘いか?」


「いや、前回の後、どうなったか気になってね。俺も幹事だったから」


「あー。うん。あの後、私立のと話がはずんで、何回かデートというか、遊びに行ったんだよ」


「おー、なかなかやるね」


「3回目に遊びに行った後に、突然言われたんだ」


「まさかの向こうから告白か?」


「あなたの事は好きだけど、ちょっと違うと思うの。ごめんなさい、って言われた」


「ん? お前から告白したのか?」


「いや、告白すらしてないのにフラれた。俺、どうしたらいいんだろう?」


「そ、そうか」


「俺、趣味でネットに将棋の小説を投稿しているんだけど、なんかさぁ、こちらから読んでくれと頼んでもないのに、お前の小説は面白くないから、もう読まないってコメントを書かれたような気分だよ」


 俺には、その例えが、よくわからないが、本当につまらない小説だったのではないだろうか。


「俺も恋愛経験が乏しいから、何とも言えないけど、お前にも問題があったんじゃないのか? 自分だけ、将棋の話をしていたとか」


「一応、彼女が好きそうな話題を振っていたんだけどなぁ」


「それなら、お前のいいところを見せるとか、お前が彼女に好意を持っているのを匂わせるとか、そういう工夫はしたのか?」


「一応、決め台詞として、言ったセリフがあるんだけど」


「ほぉ。何て言ったんだ?」


「俺の棒銀ぼうぎんを今度、見せてやるぜ!!」(※1)


 あー、それだわ。絶対、彼女は勘違いしたと思う。


 俺は、将棋君をなぐめて、機会があれば、また合コンに誘うと約束した。俺の方はうまくいっているなんて言えなかった。


***


 実は、合コンの後、将棋君に誘われて、ラノベ文化研究会という、大学非公認サークルを見学に行った。俺もラノベが好きだからね。サークルといっても非公認だから、有志達が会長の家に集まって、ラノベ文化について語り合うそうだ。


 初めて行った時に驚いた。俺はてっきり、好きなラノベ作品について語り合うものだと思っていたが、まず、A4で100枚くらいある資料が配られ、研究成果の発表から始まった。


「ラブコメが青少年の育成に与える医学的要因と社会に与える影響について」


 内容は、至極、真面目なものであり、様々な考察が重ねられて、そのまま大学の卒業論文として通用しそうだった。俺も一通り読んだが、長い内容を一言でまとめるとこうだ。


「ラブコメは時代を問わず青少年に好まれており、売れれば出版社も儲かる」


 このサークルは、毎年、研究成果を纏めたものを自費出版で1000部、印刷して、コミケで売るそうだ。関係者以外、全く売れないので、国会図書館を始めとした全国の図書館や地元の小中学校に寄贈しているそうだ。


 百歩譲って中学校は、まだしも、小学校さんは、貰っても困るだろうに。


 また、サークルでは、意見交換が熱を帯びてくると口論となる事もあり、有名な講堂前で内ゲバになった事があるという。内ゲバといっても、単なるののしり合いだったらしいが。


 その口論の論点は、「のじゃロリ」は、有りか、無しか、だそうだ。


 平和な時代になったものだ。


 T大生は、真面目で、物事を真剣に取り組む人が多いと聞く。ただ、方向性を間違うと、このような事になる。


 俺も、落し物事件で興信所を総動員したり、合コンのため、変な方向へ全力を出したりしているから、人の事は言えない。


 後日、俺は、ちょっと悪ノリして「妹属性に関する考察」というレポートをサークルで発表させて貰った。A4で5枚くらいだけど。


「調査対象の母集団が・・・」


「年齢別での更なる考察が・・・」


「アンケート内容をもう少し充実させた方が・・・」


 すごく、真面目に対応されてしまい、ちょっと困ってしまった。


 調査方法の詳細を説明するために、プロジェクターで映したミアのびる動画は、「金髪ロリの実写版だとぉ?」と、好評だったようだ。


 なぜか全会一致で、ミアがサークル名誉会員(非常勤)に選ばれた。


***


 もう1人の合コン参加者、山崎にも電話してみた。


「山崎、合コンの後、私大のと、いい感じだったけど、あの後、どうなった?」


「あの後、何回か遊びに行ったよ」


「おお。2人で遊びに行けるのは、脈ありだぞ。それでどうなった?」


「3回目の時に、飲みに行ったんだよ。それで、何となくいい雰囲気になってさぁ」


「ほぉ」


「帰り道で手をつないで歩いていたんだ」


「それで?」


「ちょうど、ホテルの前を通ったんで、彼女の手を引っ張って、無理矢理、入ろうとしたら、平手で叩かれて、怒って帰っちゃった」


「アホやなぁ。手を繋いだ事で舞い上がったんだろ。性急過ぎだ。少なくとも先に合意を取るか、自分の家に行くとか、その辺りをうまくやればよかったのに」


「だって、ウチは狭いアパートなんだよ。女の子なんて連れ込める所じゃないよ」


「うーん。まぁ、終わった事なら、次に活かすしかないよな」


「そういう○○おれは、どうだったんだ?」


「あー。まぁ。うん。いろいろとな。また、機会があれば、合コンに誘うよ」


 うまくいっている俺は、誤魔化した。


「合コンはもういいや。僕さ、過疎かそってるけど、ライブ配信者なんだよ。結構、視聴者からメールが来てさ、その中で仲良くなったと今度、デートするんだ」


「俺は詳しくないんだけど、ライブ配信の世界では、ファンや視聴者と恋愛関係になると、いろいろマズいんじゃないのか?」


「それは内緒にして、みんな、付き合ってるよ。とっかえひっかえ、女の子を喰ってる奴なんて大勢いる。DMやラインで好き好き言って、付き合おうと言えば、入れ喰いだって」


「実際に会ってないのに、それって、付き合っていると言えるのか?」


「この世界では、そうだね。そして、DM、ライン、電話、ビデオ通話で、好き好き言って、寝落ち通話するまでがワンセット。会えるかは、相手とのリアル距離次第だね」


「なんか、不思議な世界だな。お前、未成年にだけは手を出すなよ」


「ああ、そういう関係になる前に、身分証明証を確認するのも、この界隈かいわいでの習わしだよ」


「へー」


「まぁ、僕もいつか大手配信サイトで、登録者数を100万人にして、港区のタワマンに住むんだ」


「まぁ、がんばれよ。ところで、お前は、個人情報というか、T大生っていうのをおおやけにしているのか?」


「生配信で言ってるよ」


「俺が言うべきことではないが、変なのに引っかからないように気を付けろよ。ネットの世界は、変わった人が多いらしいぞ」


「大丈夫だって」


「ちなみに、お前は、合コンの時のように、配信中はキャラを作ってんのか?」


「それは、長期間やっているアニメのキャラ年齢を言わないのと同じくらい、聞いてはいけない事だ」


「ようわからん。それよりさ、俺も動画配信に興味があるんだけど、動画製作や配信について、レチャーしてくれよ」


「なんだよ、やっぱり○○おれもファンの女の子を喰いたいのか?」


「違う違う。俺が配信者になりたいわけじゃなくて、将来、弁護士になった時の商売のネタがあるような気がしているんだ」


「よく分からないけど、僕も忙しいから嫌だよ」


勿論もちろん、タダとは言わない。レクチャー代を払うよ」


「金額にもよるけど、それならいいよ」


 山崎は、快く引き受けてくれたので、後日、会う約束をした。


 彼からは、その界隈かいわいの話をいろいろ聞かせて貰った。大手配信サイトで登録者数が100万人超えると年間、億の金が動くそうだ。なるほど。動画配信者になりたがる奴が多いのはそういうことか。大手以外にも配信サイトは幾つもあり、半分、趣味でやっている人も沢山いるらしい。


 俺にとって重要なのは、お金を稼いでいる配信者は、どこかの事務所に所属している場合が多いということだ。芸能事務所みたいなものだろうか。そうすると、顧問弁護士がいるだろうから、ここに俺が入り込む余地はなさそうだ。


 山崎自身はゲーム画面に自分の声をかぶせて実況しているだけに過ぎず、例えば人を撮影して動画を作るという事はやっていないそうだ。ちょっと、俺の求めているものとは違うな。


 もし俺が動画配信に手を出すなら、素人の彼に相談するより、プロに頼むか、募集した方が早そうだ。



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