水泡に帰させない
司法試験
俺 主人公 大学2年
エリさん 自宅の家政婦さん
マリちゃん エリさんの娘
ミア 中一女子 金髪ハーフ
***
【大学2年5月】
5月は、司法試験か終わるまで、しばらく家庭教師を休ませてもらった。
「司法試験を受けるのか。すごいな。応援しているから頑張ってくれ。合格したらお祝いをしよう」
ミアのお父さんは、そう
「ローヤー? ふーん」
肝心のミアは、司法試験には全く興味を示さず、家庭教師が休みになる事を喜んでいた。正常な中1女子の反応だと思う。でも、ちょっと
ゴールデンウィーク中は、大学が休みなので、ワンルームの方に
せっかくの連休なのに、マリちゃんをどこにも連れて行ってあげれず、可哀想だなと思っていたら、母が上京してきて、女3人で出かけていた。ちょうどよかった。
シングルマザーのエリさんに必要だったのは、とりあえず、仕事(お金)だったが、最終的には、家族なのかもしれない。独身の息子司法書士先生でも、今度、紹介しようかな。あ、あの人、まだ年収が低いんだった。
そういえば、エリさんの確定申告・・・というより、区民税申告をどうしたのか気になった。俺は、分かりっこないんだから、申告しなくてよいと言ったが、真面目なエリさんの事だ。どうしたんだろうか。
エリさんの家政婦としての収入は、昨年10月半ば~12月で約50万円。家政婦の賃金に給与所得控除が適用されるのか、俺には分からないが、たぶん、確定申告は必要ないと思う。
「エリさん、そう言えば、区民税の申告ってどうされたの?」
「税務署で確定申告したわよ」
「えっ? 去年の家政婦の給料だと、確定申告はいらないよね?」
「30万円の
最後は、泣くマネをして、また、小芝居が始まった。
それにしても、支度金の30万円を収入に入れるとは思わなかった。黙っていれば、税金を払わなくていいのに。エリさんの判断だから、口を挟まないが。
エリさんには、別れた旦那さんから、
「実は俺、株式投資の才能があるんです。慰謝料を銀行に預けておいても、ほとんど利息がつきません。エリさんも株式投資を始めてみませんか。教えますよ」
「えー。株式投資って、株価が下がったら
「追証なんて、よく知っていますね。でも、それは、証券会社から事実上、お金を借りて信用取引をするからですよ。自己資金で現物取引だけしていれば、怖くないですよ」
「んー。やっぱり止めとく」
「そうですか。では、俺と
「値上がりしなかったら?」
「俺のおごりで、皆で高級焼肉店に行きましょう」
「それだと、賭けの対価が私の方が不利じゃない?」
「じゃあ、焼肉3回で」
「よし、のった」
そんな変な賭けをした。
その1ヶ月後、株は、元値から1株240円値上がりした。
「本当に値上がりするとは驚いた。ちなみに買っていたら、幾ら
エリさんが驚いて聞いてきた。
「1000株、買っていたら24万円、税金を20%を引いて、19万2000円の儲け。手数料は別ね」
「すごい。私の1カ月の給料くらいじゃない。でも、どうして値上がりするのか分かったの?」
「それは・・・T大学式・株式投資・特殊計算式というのがあってですね、詳しく言えないんだけど、計算するだけでもパソコンで3日かかるんだ」
「へー。さすがは日本一の学府だね」
なんか、適当に
実は、未成年であっても、親権者の同意があれば、証券会社の口座を開設できる。ただし、親が口座を持っている事などの条件がつく場合がある。エリさんが、
取引
***
5月中旬、司法試験が始まった。試験は4日間で、水・木・土・日曜日が試験日で、
司法試験が終わり、ひとまず落ち着いたので、しばらく休んでいた家庭教師の方に力を入れる事にした。ミアは中学1年生になり、中高一貫の女子校に通っている。小学生の時、男子にひどい事を言われていたので、女子校だったのはよかったと思う。トラウマになっていないようで毎日、楽しそうに学校へ行っているとミアのお母さんが言っていた。
日本に来て1年9カ月になるが、日本語の読解力には、まだ不安があるし、書く
週に2回しか家庭教師の時間がないので、主にミアの苦手な数学に時間を
ある日、家庭教師が終わってから、帰ろうとしたらミアが俺を呼び止めた。
「ねぇ、俺おにいちゃん」
背筋が、ぞわわってした。こいつ、何を企んでいるんだ?
「ミア、家庭教師の時は、先生と呼べと言ってあるだろ。どこでそんな事を覚えて来た?」
「だって、家庭教師は終わったからいいじゃん。友達が年上の男の人にお願いする時は、おにいちゃんと呼べばいいって言ってたよ」
ミア、友達は選んだほうがいいぞ。確かに
「そんな事をしなくても、頼みごとがあるなら言えばいいだろ」
「だって」
「それで、何が欲しいんだ?」
「本」
「なんだ、本くらい、お前の親父さんに頼めば買ってくれるだろ」
「それがちょっと・・・」
なるほど。親には言いにくい本か。そこで、俺にあるアイデアが
「よし、わかった。本屋に連れて行ってやる。ただし、条件が2つある。1つ目は、本は買ってもいいが、渡すのは、俺が中身を確認してからだ。ヤバい本ならボッシュートだ。2つ目は・・・」
ミアは、俺の条件を飲んだので、早速、実行した。
「よし、ミア、そこで上目遣いだ。そうそう。ここで
「おにいちゃん、大好き」
「よーし、次は、手を前で組んで、おにいちゃん、お願い、だ」
俺は、ミアの
後日、ミアを連れて大きな本屋に行った。ミアが友達から聞いたというお薦めの漫画や小説を30冊くらい買った。どんな本でも、本に興味を持つのはよい事だ。俺が買ってミアに貸すと言う形にしている。
ミアが欲しかったという本は小説だった。表紙から、これは父親には言えないなと思った。まぁ、そういう年頃だ。俺も中学の時に父からエッチな本を貰っていたから気持ちは分かる。これは、内容を確かめた上で渡す事にした。
内容はともかく、俺では判断できなかったので、家政婦のエリさんに相談した。そしたら、エリさんがハマってしまうという被害が発生。俺、どうしたらいいんだろう?
【大学2年6月】
6月初旬に司法試験の短答式の成績が発表された。短答式試験というのはマークシートで、憲法、民法、刑法の3科目ある。これは1次試験のようなもので俺は合格していた。
司法試験は、まず、マークシート試験の成績によって受験者の約2割が足切りされる。その後、論文試験の結果で合格者が決まるという流れだ。
普通なら1次試験のマークシートをやってから、2次試験(論文)を受ける形になると思うが、水・木・土曜日の3日間で2次試験を受けて、最終の日曜日に1次試験を受けるという不思議な受験方法だった。もしかしたら、受けることに意義があるのかもしれない。ともかく、俺は足切りされなかった。最終の合格発表は9月だ。
***
俺は、ミアの
「おお、どこでダウンロード出来るんだ?」
「頼む、1万円でデータを売ってくれ」
・・・売らないよ。
何か大好評だった。
妹属性の調査のつもりだったが、ここで、俺は大きなミスに気がついた。妹という前に、金髪ロリ属性の調査になってしまった。モデルが悪かった。異世界ラノベが売れるわけだ。
しかし、これは、ちゃんとした学術的研究だ。見せた奴にインタビューもしている。妹がいるかどうかを聞いた。やはり、俺と同じように妹のいる奴は「そんな妹はいない」と、現実的だった。一人っ子や男兄弟だけの奴は、やはり、妹に幻想を持つらしい。この研究内容は、近々、学会(学内有志の会)で発表する予定だ。
***
大学の学食で昼飯を食べていたら、隣の席の話が聞こえて来た。
「サークルに理1の山崎って奴いるだろう。ほら、動画配信やっていて
「あー、あいつね」
たぶん、
次話は、★付の予定
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