☆警察沙汰
※ この話はカクヨム用に新たに
※
***
約束の日、高いスーツを着て指定された時間よりも少し早めにレストランへ行った。彼女はまだ来ていなかった。
「○○さんで予約してあると思うのですが」
ウェイトレスさんが「ああ」という感じで席に案内してくれた。興信所からVIPと言われているのが伝わっているのだろうか。
見知った
俺は事前に
カモ1人に複数人で
ただ、案内されたテーブルは見晴らしの良い、おそらく店で一番いい席ではないかと思う。そうすると、そういう
そうこうしているうちに、彼女がテーブルに案内されて来た。
「すいません。先に来てしまって」
俺は
「いえ、遅れてごめんなさい。今日は来て
「こちらこそ、お誘い
「
「ええ、そうです。そっか、あの時に
「今日、お子さんは?」
「実家に預けてきています。お
今日の彼女はフォーマルな
さらに彼女の胸はとても大きかった。会話しながら、どうしても目が
俺は、父親が経営する会社に
彼女は学生時代の失敗談を話してくれた。
近くのテーブルで俺達の様子を見ている興信所の人は、自然な感じで全く目立たなかった。さすがはプロだ。
会話が
「あの、今日はお話し出来てとても楽しかったです。もしよろしければ、また、こうしてお会いする事は出来ますか?」
俺が色々、考えている
もし「この後、飲みに行きましょう」だったらハニートラップを疑った。彼女の目的がわからない。
時間にして数秒だと思うが、頭の中でいろんな考えがグルグルしていた。そして、俺は決断した。
よし、
「今回はお礼と言う事でご
当然、ウソである。
「そ、そうなんですか。それはおめでとうございます」
「ありがとうございます」
あれ、なんか残念がってないか。その後は会話が全く広がらず、デザートを2人で静かに食べ終えた。
「遅くなるとご主人も心配でしょうから、そろそろ出ましょうか」と、俺は彼女を
彼女は黙って
店を出ようとした時に、後ろから彼女が、俺のスーツの左
「あの、お会いできた記念に、店を出る
なんの記念だ? そう思ったが、それくらいはいいと思った。俺もいろいろ記念になる。鏡はないが、今の俺はきっと、鼻の下を伸ばしているだろう。
店を出て、入口から少し離れた所で彼女と別れの
「てめえ、人の女に何してんだ!」
「なるほど、
地面に倒れ
男は
1人のスタッフが「大丈夫ですか」と俺を立たせてくれ、男から離れだ場所に連れて行ってくれた。
「
所長が俺の所にやって来てそう言った。被害者が現場に残ってなくていいのかと思ったが、お任せする事にした。スタッフの1人が車で病院に連れて行ってくれるそうだ。
興信所の車でレストランの駐車場を出る時、遠くでパトカーのサイレンが聞こえた。
***
病院への
「お宅の所長との話で、俺がサインを出すまでスタッフさんは動かないって事だったのですが、なんか現場突入みたいになってましたよね」
「我々にとって一番大事なのは依頼者の安全ですからね。所長からは、依頼者に何かあったら、かぐに
それもそうか。なるほど、俺は所長の
スタッフさんは、大きな病院に連れて行ってくれた。病院の夜間受付では、かなり待たされた。俺は重症ではないので優先順位が低いのだろう。興信所の人も付き添ってくれて、時折、彼のスマホに着信があり、向こうの状況を教えてくれた。
「
「行きたくないけど、仕方ないですよね」
「ははは。混乱した現場にいなかっただけでも良かったじゃないですか。そうそう、うちの所長からの伝言です。「バカな小金持ちの若い男が、鼻の下を伸ばして人妻と食事に行くのに、
「何か、ひどい言われようですね」
「でも、
「・・・」
念のためレントゲンを
「骨には異常はありません。翌朝、
***
薬を
夜の警察署は、ほとんど人がおらず静かだった。スタッフさんが話を通してくれると、年配の警察官がやって来て、ロビーにある応接テーブルで話を聞かれた。てっきり、
名前や住所、それから職業を聞かれたので、素直に学生だと言った。いろいろと事情を聞かれたが、俺はバカなエロい男を演じて興信所と話を合わせた。
「財布を拾ったお礼とはいえ、人の奥さんと2人きりで食事に行くのは
エリさんも使っていたが、一部でモテモテという言葉が
「それで、向こうの話だけど、結論から言うと
「そうだったんですか」
「腕を組んで店を出て来たのは本当?」
「・・・はい」
「食事の後、奥さんと、どこかに行く約束はしていた?」
「いえ、店の外で別れる予定でした」
「そっか。これは事件とは関係ないけど、もしかしたら奥さんはそのつもりだったのかもね」
警察官は、意味ありげに笑った。
「旦那さんと奥さんは
「
「うーん、顧問弁護士さんがおられるのですか」
なんか残念そうだ。
「・・・わかりました。事件化する可能性があるという事で対応します。被害届を出される場合は、お手数ですが、またお越しください。今日はこれで結構です」
結局、1時間くらいだったかな。先に興信所が話を通してくれていたので短かったのだろう。所長たちはもう帰ったらしい。
待ってくれていた興信所のスタッフさんに帰りも送ってもらった。
その晩は、
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