☆お母様はお怒りだ
俺 主人公 英国に留学経験あり
ミア 小6女子。USと日本のハーフ
お母さん ミアの母。アメリカ人
***
日曜の午後6時30分にミア宅に着いた。今日は家庭教師をしないつもりだったが、夕食はきっちり頂いた。
夕食後、3人で話をする前に、俺はお母さんに、お
『ミアさんが学校に行かない理由を、数日前に俺は聞いていました。ただ、お母さんに説明するのが難しいと感じたため、ミアさんと話し合って、証拠を押さえるためICレコーダーを持って、学校に行ってもらいました。お母さんに相談もせず、勝手な事をして申し訳ありませんでした』と俺は頭を下げた。
『先生は悪くない。証拠は必要だったんだよ』とミアが
お母さんは、深いため息をついた。
『わかったわ。言いたい事はあるけど、音声は
『はい。まずは、こちらをご覧ください』
TVの台詞みたいだと思いながら、俺はノートパソコンの準備して動画を再生をした。
映像を見たお母さんは、ものすごく怒っていた。そりゃ、自分を
それから、俺は、ミアに、『学校であった事や、ミアが考えている事、思っている事をすべて、お母さんに話しなさい。もし、俺がいると話しにくいなら席を外すから』と言った。
『先生もいて』と、ミアは少し不安そうに言った。
ミアは、まず『ママ、心配かけてごめんなさい』と、母親に謝った。
それから、今までの経緯を話したが、お母さんは「よくわからない」という顔をしていた。
ミアの話が終わってから『よく話してくれたね。ありがとう』と、お母さんはミアを抱きしめた。「白人親子の
少し落ち着いてから、お母さんは『先生と話があるから、部屋で勉強していて』とミアに言った。俺は少しだけ時間を貰って、漢字の「読み問題」のコピーをミアに渡した。
『あなたはミアの言っている事がわかった?』
『最初は、よくわかりませんでした』
『そうよね』
『ただ、いろいろ言ってますが、学校を休んでいるのは、「
『・・・』
『一応、原因はわかりましたので、ミアさんが学校へ行く、あるいは、行きやすくするには、この男の子達を対処すればいいと思います。方法はいろいろありますが今回は証拠がありますので難しくないでしょう。
それから、全く、別の方法として、ミアさんが転校するという手もあります。逃げるようでミアは嫌かもしれませんが、学校や相手の親と交渉する手間は省けます。
アメリカは知りませんが、日本の公立学校は、学校に1日も行かなくても中学校まで卒業できます。お勧めはしませんが、このまま学校に行かず家庭教師をつけて家で勉強する方法もあります。俺が留学したUKだと、そういう子供もいます。
どんな方法であれ、俺は可能な限りサポートしますが、どうされるかは、ご両親がお決めになる事です』
『そうね』
『一度、ご家族で話し合われてはいかがでしょうか。うちの実家では、よく家族会議をするんですよ。お互いに言いたい事を言って
『素敵なご家族ね』
『
日本の大学に行きたいなら日本人よりも勉強しなければなりません。アメリカの大学に行きたいなら、日本ではアメリカ○スクールで勉強するとか、いろいろ方法があると思います』
『主人の
生活基盤は日本と言うことか。アメリカだと高校まで義務教育だから、日本でも学校に行きさえすれば何とかなると思っているのかもしれない。でもそんなに甘くない。
ミアが小学1、2年生なら、普通に小学校に通っているだけで卒業までに「立派な日本の小学生」になれるだろう。しかし、小学5年からだと中学受験は間に合わないし、ここから高校受験まで学力を高めていくには普通の倍の努力が必要だと思う。
『お答えいただきありがとうございます。余計なお世話かもしれませんが、よい機会ですので、ミアさんの将来についても、ご家族でお話されるといいかもしれませんね。今回の事も含め、ミアさんも何か思う所があるかもしれません』
『わかった。ありがとう』
結局、俺には何もできない。ご両親が決められる事だ。なんとなくだが、ミアは、本当は「日本に来たくなかった」のではないかと思う。
お母さんは、とりあえず、明日はミアを休ませて、不登校や男子生徒との問題は旦那さんと相談すると言われた。
「家庭教師は今後どうすればいいか」と聞くと、ミアが学校を休んでいるうちは、話し相手も必要だから出来る限り来てほしいと言われた。通訳の方も旦那様が帰られるまで続けてほしいそうだ。
その日は、勉強を終えたミアと遊び帰宅した。
***
ミアはその後、学校には行かなかった。というか、お母さんが行かせなかったようだ。俺は、ミアの家庭教師には出来る限り通った。
しばらくして、お母さんから学校と話をしたいから、また通訳をお願いしたいと言われた。旦那さんとの話し合いで「学校に相談する」という事になったそうだ。
ただ、夫婦の間で温度差があるようで、旦那さんは「一度、学校に相談してみれば?」という感じらしいが、お母さんは徹底的にやりたいようだ。
『通訳は
『私もそれ(解決)は期待していない。相手の親も交えないと話は進まないと思うわ。学校に行くのは、相談ではなく、ミアが安心して通える学校なのか確かめたいからなの』
『具体的にどういう話をされるのですか?』
『状況を説明して学校がどう動くか答えを聞きたい。それによって今後を考える』
『相談ではなく、ミアさんがいじめられているという事を報告して対応を聞きたいという事ですか?』
『そう』
『学校と言う所は、こちらが下手に出て「困っているから助けて」という相談には動いてくれますが、「いじめ」という事を親が持ち出して責任問題が出てくると、途端に自己保身になる事があります。
まぁ、これは会社でも一緒ですけど、交渉している時は話を聞いてくれますが、こちらが訴えると言うと、それ以降は話も出来ないのと同じです。ともかく、お母さんがそういう方向ならば今回は証拠の音声を聞かせずに話をしましょう』
俺は前回と同じように小学校との約束を取り付けた。今回は、教頭、学年主任、担任の3人の出席をお願いした。
当日、俺とお母さんで学校へ行き、
「ミアの登校拒否の原因は「いじめ」であり、このままでは学校に通わせることはできない。学校として何か対応をしてくれるのか」と聞いた。
また「いじめている10人の保護者との集まりを学校が主催するか、出来ないのであれば相手の連絡先を教えてほしい」とも通告した。
さらに「こちらには証拠があり、そちらの対応が不十分であれば、いじめの事実をアメリカで公開する。相手の生徒の個人情報も興信所で調べて法的
お母さんは怒っているのか、非常に攻撃的な事を言っていたので通訳に苦労した。これは交渉ではなく、一方的な通告だった。
『相談ではない。最後
そんなお母さんを見て「ああ、この人はやっぱりミアのお母さんだ」と俺は思った。
教頭先生達は驚いていたが「事実関係を確認してからご連絡します」と答えて、その日の面談は終了した。
正直、学校相手にやり過ぎだと思ったが、日本人の俺と、アメリカ人のお母さんの感性が違うだけかもしれない。
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