☆ミアのおとり作戦
俺 主人公 英国に留学経験あり
ミア 小6女子。USと日本のハーフ
お母さん ミアの母。アメリカ人
【大学1年9月】
今日は家庭教師が休み。昼間に携帯レンタル店へ行って、とりあえず1週間、携帯を借りた。ミアの緊急連絡用だ。俺の学生クレジットカードで問題なく契約できた。
ミアの
***
午後7時30分に俺はミアの家を訪問した。お母さんには「明日、学校へ行けるよう
ミアにはICレコーダーの使い方を教え、朝、電源を入れて、服に1つ、通学鞄に1つ、学校に行ったら、机に1つ入れておくように指示する。
「明日は、相手に何を言われても、ミアは、暴言や悪口を言わない事。言い返すのは構わない」
「わかった」
次に、携帯の使い方も教える。
『学校で嫌な事があれば、すぐに帰ってきていい。先生に言わなくてもいい。後始末はこっちでやる。生徒玄関はカギがかかっているかもしれないから勝手に開けて出てこい。俺は学校の近くで待機しているから、学校から出たら、携帯で電話しろ』
「わかった。これ(携帯)欲しい」
「レンタルだからダメ。お父さんにおねだりしてみたら?」
「うー」
作戦の打ち合わせは、これで終わりだ。俺は、「明日は家庭教師に来る」とお母さんに伝えて、この日は帰った。
***
9日目。スパイ作戦決行日。俺はミアの通う小学校に近いのネットカフェで朝から待機していた。学校の終わる時間頃まで待ったが、特に電話連絡がなかったので小学校まで迎えに行った。
敷地内に入り、生徒の出入り口でミアを待つ。学校には、通訳として挨拶してあるので、何か言われても問題ない。
20分ほど待っているとミアが出て来た。どうやら1人のようだ。何か言おうとしたので、人差し指を口にあて「しー」のサインを出す。意味は通じたようだ。
校門を出てから、ミアが話しかけてきた。
『久しぶりに行ったけど今日もいろいろ言われた』
『そうか。よくがんばったな。道端でする話じゃないから、詳しくは夜に聞くよ』
『うん』
『頑張ったご褒美になにかプレゼントしてあげる。何がいいか考えといて』
『スマホがいい』
『それは親に頼め』
たわいのない会話をしながら、俺はミアを家まで送った。携帯とICレコーダーは途中で回収した。
一度、家に戻り、ICレコーダーのデータをノートパソコンにコピーする。音声データから必要な部分を探すには、パソコンの方がやりやすい。午後6時30分にミアの家に行く。夕食を頂いてから、ミアの部屋に行く。
ミアから悪口を言われた時間を聞いたら、2時間目と3時間目の間と5時間目と6時間目の間の休み時間だと教えてくれた。俺はミアには漢字の「読み問題」をやるように指示した。イヤホンをつけて、持ち込んだパソコンで音声を確認しようとすると、
「あの、昼休みにトイレに行って・・・、レコーダーを止めていいかわからなくて』と、ミアが恥ずかしそうに言った。
ああ、そういう配慮を全く考えてなかった。
「ガキの小便の音なんぞ聞くか。後で消しておくから心配するな」
と、俺は少し乱暴に言った。その方が話を
悪口を言っている部分を探すのに手間取ったが、内容は、以前、ミアが言っていたような言葉だった。「大人が言えばアウト」なのだが、子供だからわかっていないのだろう。
俺は、「これは「いじめ」なのか」と考えた。いや、第3者が見て、いじめと判断できるのか?
内容は別にして、悪口を言っているだけとも言える。しかも、「どうしてそんな事を言うの?」と、ミアも反論しているから、一方的でない分、
もし、映像があれば、男子数人がかりで、女子を囲んで悪口を言うシーンは、視覚的に「いじめ」と思えるだろう。しかし、映像はない。
ミア自身も内心はともかく、聞かれれば「いじめではない」と言うだろう。当事者に「いじめ」と思っている人が誰もいないから、この音声を学校に持ち込んでも、
・・・ん、待て待て。なにかおかしい。
仮に、俺がネットにこの音声を流して「これはいじめでしょうか」と聞いたら、ネット民の8割は「いじめだ」というのではないか?
第三者目線だと、そうなるのではないか?
うーん、なんだか、よく、わからなくなってきた。もう、親に判断を任せよう。
その後、1時間の勉強が終わったミアにも聞いてもらい、誰がどの言葉を言っているのか、説明してもらった。男子は5人いた。
写真はあるかと聞いたら、1学期の学校行事の集合写真があったので、どの声が誰なのか指差してもらった。
写真は借りることにした。この日は、ミアとの娯楽タイムは中止となった。
帰るときに、お母さんには「明日は用事があるので休むが、日曜の夜に来る。その時に話がある」と伝えた。
***
その夜、俺は悪口を言っている音声の「文字起こし」をして、それを英訳した。お母さんに文章を見せるだけでもいいのだが、やはり音声を聞いた方が、きちんと判断できるのではないか思った。
そこで、音声に字幕をつけ映像化する事にした。
翌日、俺は「ネット用の動画を編集してくれる会社」に電話を掛けた。土曜日なので、電話に出ないところが多く、出ても、「営業がいないので月曜日に掛け直してくれ」と言われた。
何軒目かで、やっと話を聞いてくれて「ご新規さんなので、前金で。それと特急料金がかかっていいなら」と引き受けてくれた。早速、その会社へ行ったら、普通のマンションだった。フリーランスというか自営業かな。
仕事の依頼はスムーズだった。バックは静止画で音声に合わせて字幕を付けるだけ。上部に日本語、下部に英訳。5分の動画が2本分だ。お母さん用とは別に学校や相手の親に見せるため、誰が言っているのかわかるように台詞バージョンも依頼した。もちろん、実名だ。
A君「・・・」
ミア「・・・」
B君「・・・」
「通常は、名前を言っているところに「ピー音」を入れたり、声を加工したりするけど、そういうのは必要ないですか?」と映像会社のオーナー社長さんが聞いてきた。
「見せるのは、学校や相手の親などの関係者だけなので大丈夫です」
その後、ミアと俺は親戚と言う事にして、俺の名前で、秘密保持誓約書と、著作権譲渡契約書を交わした。著作権契約はネットでひな型を拾ってきた。
***
翌日の午後3時に映像のデータを受け取った。
「料金の割に簡単な仕事でしたので、女の子の声を加工して名前にモザイク、名前を呼ばれている所はピー音入れて別バージョンを作っておきました。サービスです。もし、相手の
怖い事を言う人だ。
・作中では、『』は、英語、「」は日本語という表現で使用しております。
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