第14話 称号士は剣技と魔法を使う
「もー、二人とも黙ってるなんてひどいよー」
物件の所有者の所に向かう途中、ルコットが抗議の声を上げる。
「悪い悪い。言っても信じられないかなと思って」
「まあ、確かにリアさんが女神って言われても絶対に信じられなかったと思うけど」
「だろ? イメージ違うもんなぁ」
「……ちょっと、お二人とも酷くないですか?」
今度はリアがふくれっ面になってしまった。
結局、俺たちはルコットが見つけた物件の所有者に会いに行くことになった。
条件がどんなものかは所有者に会って詳しく、とのことらしいのでどんなものかは分からない。
しかし、手持ちの資金も少ない状況だ。
選り好みはしていられないし、費用面などは破格なのでできればここに決めたいという気持ちは強い。
ということで、俺たちは物件を借りるための条件とやらを聞くため、物件の所有者が住んでいる屋敷へと向かっているわけだ。
どうやら王都の外にあるらしく、今は城壁から真っ直ぐに伸びている街道を歩いている。
「アリウス様……」
「ああ」
屋敷までまもなくとなったところ、俺は不穏な気配を察知してショートソードの柄に手をかける。
すると、予想通り街道の脇からモンスターが現れた。
――ガルァアアアアア!
遠目に見えたのは二つの角を持つ大型モンスター、ミノタウロス。
手には巨大な斧を持ち苛立つように咆哮しているが、明らかにこんなところに現れるモンスターではない。
「うっへぇ。大きいですねぇ」
「リアさん、そんな呑気な……」
「大丈夫大丈夫。アリウス様なら余裕ですよ」
「……」
ミノタウロスはB級以上のギルドに討伐依頼が出されるモンスターなんだけどな……。
リアにルコットの守護を任せ、俺はミノタウロスに向けて剣を構える。
ミノタウロスは普通のモンスターとは比にならない耐久性を持つとされるが、反面、頭から生えた二本の角が弱点とされている。
そこを狙えれば有利に戦闘を進められそうだが、ミノタウロス自体も俊敏だしどうするか……。
「っと、そうだ」
エルモ村で巨大蛇ウロボロスを撃破した時に新しい称号を習得していたのを思い出す。
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【選択可能な称号付与一覧】
●疾風迅雷【※新規】
・《連続剣技》の使用が可能になります。
●豪傑
・筋力のステータスがアップします。
●紅蓮
・初級火属性魔法の使用が可能になります。
・中級火属性魔法の使用が可能になります。
・上級火属性魔法の使用が可能になります。
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「よし、これなら……。称号付与、《疾風迅雷》――!」
剣士系のジョブが持つ能力とされる連続剣技。
その中に瞬速の二段攻撃があったはずだ。
その剣技ならミノタウロスの角を捉えられるかもしれない。
俺は迫ってくるミノタウロスに照準を合わせ、やや後方に片足を引く。
――アリウス君の【称号士】は魔法が使えるのかい? 剣技が使えるのかい? どうしたら役に立つか教えてくれよ。
解雇された時、ギルド長レブラに言われた言葉。
戦闘に向かう高揚感の中で何故かその言葉を思い出す。
リアとルコットが視界の端に映り、少し笑みが溢れた。
「いくぞっ! 連続剣技、《ダブルアサルト》――!」
地面を蹴るのと、ミノタウロスの角を両断するのはほぼ同時だった。
――ゴガァアアアアアッ!
すれ違いざまに、高速の二連撃――。
俺の剣は硬質なミノタウロスの角をやすやすと斬り落とし、角は地面へと突き刺さる。
ミノタウロスが苦しげな叫びを上げ、地面に這いつくばっていた。
弱点の角を切断されたことで力が入らなくなっているようだ。
これなら魔法も当てられるはず――。
「メテオボルケーノ――!」
すかさず《紅蓮》の称号を付与し、追撃の上級火属性魔法を使用。
火柱が動けなくなったミノタウロスを飲み込んでいく。
少し経ってそこに残ったのは、二本の角だけだった。
「やった! お兄ちゃんすっごい!」
「ね? だから言ったでしょう? 余裕だって」
離れたところから見守っていたリアとルコットが呼びかけていて、俺も手を挙げて応じる。
そして、聞こえるはずのない人物に向けて、今更ではあるが答えてやった。
「どうやら剣技も魔法も使えるみたいだぞ、レブラ――」
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