第4話 戦い
「随分と変わったヤツが人間と一緒に居るもんだ」
「変わっているも何も、僕は竜である前にヒトだからね」
「ハッ、お前が人だってんなら俺は魔物らしく怪しい敵であるお前を殺すとしよう。出来るだけ苦しく、お前のお仲間も同じ目に合わせてやる」
「やれるもんならやってみろ!」
僕はそれが挑発であると理解しながらもたった二言だけのやり取りを切り上げ、身長が倍はあるその大男へと地面を砕く程の勢いで地を蹴り殴りかかる。
しかし大男はそれを回避し、攻撃に転じようとしたが─────
「ぐっ……!」
僕の広げていた翼は大男の胴へと当たり、勢いそのまま僕は男の引っかかった翼を振り抜き、男を歯車へ向かって投げつける。
だが大男は勢い良く歯車に叩きつけられたにもかかわらず少し呻いただけですぐさま体勢を立て直し、足元に転がっていた石の塊を僕に向かって蹴っ飛ばしてくる。
「っ!」
そして僕はそれを回避ではなく受け止めた。しかしその際の衝撃で掴んだ腕の骨は全て折れ、衝撃波で肋骨を折られたものの、受け止めきった事で後ろへの被害を食い止める。
「……ちっ、受け止めやがったか」
「受け止めなきゃ、シィーとハグラァドが大怪我しちゃうからね……っっと。ふぅ」
「折れた骨が治った……?いやまさかな」
「そのまさかだよ。肉体の損傷程度、千変万化にはどうということないのさ」
まぁ流石に欠損まで行くと元の肉体を変形させて対応してる僕にとっては再現するだけで総力が落ちちゃうんだけれども。
体の中を変化させ折れた骨や骨によって傷つけられた内蔵を直しながら、僕はただの人間如きが何故こんな力を出せたのかを考え1つの答えにたどり着く。
さっき自分の事を魔物って言ってたし……
「さて。お前、半分……いや、七割は人間じゃないな?」
「さぁな?お前こそやっぱり人間じゃ無いだろう」
「少なくとも体は人間だよ。さて、僕としてはまだ物足りないけど、お前はどうする?」
「どうするも何も……こうさせてもらう!」
滞空していた僕に人間とは思えない速度で殴りかかってくる大男の拳を僕は避け、そのまま通り過ぎた大男の頭を衝撃波を受けながらも掴み、急降下して地面に叩きつける。
(ノーちゃん!殺しちゃダメだからね?!)
(大丈夫だよ。こいつ体はほぼ魔物みたいな感じだし)
(えっ!?そうなの?!)
(じゃなきゃこんな戦い方しないって────)
「ばっ?!」
「戦いの最中に惚けるなんて、この程度で倒したつもりか?」
「だからってあの体勢から僕を片手で引き離して投げるなんて、一体何をどうすればそんな力が手に入るんだよ」
「ふんっ、女一人片手で扱えなくて何が男だ」
(あっ、それは)
そういや、こいつ最初から右手はずっと上着のポケットに突っ込んで左手しか使ってないな……何か理由があるのか?
って女?僕が女だと!?
「僕は男だっ!」
女扱いしやがったその大男に僕は勢いよく飛びかかると、大男はカウンター狙いで飛びかかった僕に拳を合わせてくる。
だが僕はその拳から出た衝撃波に体を煽られながらも体の下に潜り込むと、大男を上へと蹴飛ばす。
そしてそのまま地面をへこませる程の力で大きくジャンプをして空中で追いつくと、怒りと勢いに任せ大男の腹へと全力で一撃をお見舞する。
やったか?
(やっちゃダメなんだってばノーちゃんっ!)
(あっ、そうだった。いやでも人間じゃないし耐えきれるとは思うけ────)
「どっ!?」
シィーとそんなやり取りをしていた僕は、突如大男が落ちた事で出来た砂埃の中から飛んできた石に体を貫かれる。
(ノーちゃん?!)
(大丈夫、お腹に穴が空いた程度だから!)
(えっ?!大丈夫なのそれって!)
(大丈夫だって!ただこれからは戦闘に集中したいから、テレパシーは切るね)
「さて……やってくれるじゃん」
「てめぇこそ、どうやったら倒せんだ?」
「わざわざ敵に教える程、僕はお人好しでも悪趣味でもマゾヒストでもないよ」
「そうかよっ!」
話を切り上げ攻撃してきた大男の攻撃を、僕は防ぐでも受け流すでもなく回避に専念する。
翼や尻尾を小さくするだけでなく、時には体全体を薄くしたり、時には変形させたりして相手の攻撃を器用に避ける。
そしてそんな僕の横を通る拳や足からは、僕の予想通り物凄い衝撃波が出ていた。
こいつの身体が魔物に近いのは分かってたけど、それだけであんな無茶苦茶な威力の攻撃ができるわけが無い。
ならそれこそ魔物特有の能力を持っている可能性があるとは思ったけれど、まさか衝撃波を起こす事が出来るとは。
「案外っ、適性があるようだっ!」
「そうなるように作られたからな……ちっ!鬱陶しい!」
「ぴっ」
こいつ!声に衝撃波乗せて来やがった!
僕じゃなきゃ全治2週間の刑だったぞ!
だけど────
「魔物如きが!いい加減ウザったいぞ!腕部変容「
小賢しい事をやっているのは僕自身なのだが、ちまちまとダメージを受けるのに苛立ちを覚え、勝負を決するべく腕を異形へと変化させる。
そんな言葉と共に僕の右腕は裂けるようにして肩から無数の巨大な青い腕に変わり、あらゆる方向から大男を握り込む。
「んなっ?!ど、どうなってんだ!」
「どうもこうもこれが僕本来の力ってだけだよ。それでどうする?まだ戦う?」
「なんだよこれ……はぁ。降参だ。こんな化け物とやってられるか」
沢山の腕の中で大男がもがいているのを感じつつ、僕がそう尋ねると大男はもがくのをやめ、そう不機嫌そうに言い放つ。
こうして僕は勝利を収めたのだった。
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