第55話 「我らは汝を滅ぼすことにした」
回復した
そして、そんな彼らの後ろから、誓矢が両手に銃を握り、容赦ない光の雨を押し寄せる怪物たちへと降らせていく。
──シュイン、シュイン、シュイン、シュウッ!!
ここからは誓矢の
外の怪物たちを完全に掃滅すると、光塚たちとともに建物の中へと突入し、戦闘を続けている
この時点でプロメテウス側の勝利は確定したようなものだった。
「指揮官級発見!」
「わかった!」
強力な力で異能者たちを圧倒していた指揮官級の怪物も、誓矢のライフル銃攻撃の前にはひとたまりもない。
ヘリポートのある本部棟は誓矢たちにより、あっという間に制圧され、さらに他の建造物に逃げ込んだ怪物たちの掃滅作戦へと移行する。
この時点では、プロメテウスの異能者たちも誓矢たちの指揮下──光塚たちの指示のもと組織的な行動を回復しており、より効率的な戦闘を展開していた。
「──やった、怪物たちが逃げていくぞ!」
異能者の一人が声を上げると、それを確認した他の異能者たちも続けて歓声を上げる。
怪物たちは壊れたままの門からプロメテウスの外へと逃げ出しはじめていた。
「逃がさない──」
誓矢はエネルギーの使いすぎで遠くなりかける意識を必死につなぎ止めながら、南方へと退避していく怪物たちを削ろうと無数の光条を解き放つ。
──シュイン、シュイン……シュバアッ!
「「「えっ!?」」」
誓矢たちの驚きの声が重なった。
突如現れた三枚の大きな光の盾が、誓矢の無敵の光を弾き返したのだ。
「あ、あそこに人が!」
森宮が指さした空中に、三人の人間が立っている。
力を使いすぎたのか、床に膝をついてしまう誓矢。
そんな誓矢の頭上に三人の青年が近づいてくる。
「フェンリルよ、少々はしゃぎすぎたようだな」
「我らはこの神々の遊戯を邪魔する汝を滅ぼすことにした」
「──と言っても、ここで直接やり合うつもりはないんだけどね」
額に手を当てて小さく呻く誓矢。
「……ゼウス、メタトロン、それにサタン」
「この人たち──神様、なの?」
「うん、たぶん、そう。頭の中で何かがひどく警戒している──」
おそらくそれは、誓矢の中にいるフェンリル神の警告だろう。
その場にいた全員が極度の緊張に追い込まれた。
「神喰らいの神狼よ、サタンの言うとおり、今、ここでお主とやりあうつもりはない」
ゼウスを宿した青年が小さく肩をすくめる。
フェンリルに負けるとは思わないが、かといって、簡単に勝てる戦いでもないと笑う。
隣で気難しげな表情を浮かべているメタトロンが、言葉を続けた。
「お主を滅するには別に直接戦う必要は無い。その依り代──」
そういって、誓矢を指さすメタトロン。
「その依り代の人格を破壊すればいいだけなのだから」
「人格──? 僕を破壊する──?」
苦しげに疑問を投げかける誓矢に、最後の一人、サタンが陽気な口調で手を振ってみせる。
「簡単なこと、城を攻めるよりは心を攻めるってね。とりあえず、キミの世界を破滅へと導いてあげよう」
このまま全ての怪物を日本へと送り込み、フェンリルの人格──誓矢に関わる全てを破壊し消滅させる。
サタンの顔に暗い笑みが広がった。
「もし、そんなことになったら、キミは耐えることができずに、精神も崩壊する。そうすれば、フェンリルも同時にこの世から消滅するってワケさ」
「そ、そんなこと──!」
力を振り絞って立ち上がろうとする誓矢。
だが、下半身から力が抜けてしまい、両膝をついて宙に浮かぶ神々に頭を垂れるような姿勢になってしまう。
「セイヤ!!」
後ろからユーリが駆けてきた。
「吸血鬼の子供か──やっかいだな」
そのゼウスの言葉に、メタトロン、サタン共に宙へと高く舞い上がっていった。
メタトロンの冷酷な言葉が最後に残された。
「フェンリル──そなたの依り代たる少年ともども神の怒りに触れたのだ。ゆえに全てを滅する。これもすべてその身が招いた災い、無駄に抗うことはしないことだ」
○
「それじゃ、出発するわよ!」
キャリー少佐の命令でプロメテウスのヘリポートから航空輸送機が離陸を開始する。
誓矢たち一行──光塚、
プロメテウスから逃げ出した怪物たちは、他のエリアから移動してきた怪物たちと合流し、シベリア南方オホーツク海沿岸へと集結する。
その後、宇宙からの監視衛星の映像分析により、ほぼ同じタイミングで、オホーツク海沿岸と日本の北海道北端に同じようなエネルギー源が出現したことが確認された。
そして、シベリア南岸の怪物たちが次々と北海道へと転移していったのである。
「ゲートの応用やな」
狐神のスズネの説明に、誓矢は絶望的な気分になる。
北海道北端に出現した魔物達は、一斉に南下を開始、あっという間に北海道全域へと浸透していく。
「最悪の状況だ──」
誓矢は深く深くため息をついた。
日本を滅ぼすことにしたと神々は言った。おそらくそれは、確実に実行されるのであろう。
「──でも」
顔を上げる誓矢。すると、他の全員も同じ様な表情を浮かべており、俯いている者は一人もいない。
「たとえ、神様たちが全員的になったとしても、僕は──僕たちは絶対に負けられない!」
「「「おう!」」」
輸送機内に掛け声が響き渡った。
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