第43話 「天照大御神──?」
再び怪物を一掃した後、地面に降り立った
そんな彼らに本殿へ行きたいと申し出た誓矢に対し、
「──本殿に行きたいだと?」
「はい、詳しい説明はできないんですが、どうしても行かなければならない事情ができまして」
要領を得ない誓矢の説明に顔を見合わせる
だが、光海教授は少しだけ無言のまま考え込んだ後、ちいさく頷いて見せた。
「わかった──まぁ、本殿は今回の調査対象の一つだったからな。ついでが増えたところで問題は無いだろう」
誓矢は大げさに頭を下げた。
「ありがとうございます!」
○
その後、装甲車の中へといったん戻った一行は装備などを用意し直していく。その間に装甲車は本殿の前に車体を横付けし、誓矢が周囲を確認して怪物の気配が無いことを確認してから、自衛隊員以外のメンバーは本殿への階段を駆け上っていく。
「さて、目的の本殿に着いたわけだが、そろそろ目的を話してくれてもいいんじゃないか──!?」
教授の語尾が驚愕へと変わる。
本殿に足を踏み入れた途端、誓矢の身体が眩い光に包まれたのだ。
誓矢は落ち着いた面持ちで、周りのみんなに告げる。
「ちょっとだけ人に会いに行ってきます。もし、少し経っても戻らないようだったら、みんなだけで帰還して──」
その言葉を最後に誓矢の姿が掻き消えた。
○
「ここは、いったい……」
誓矢が目を開けると、穏やかな光に包まれた広大な世界が広がった。
既視感があると思ったら、さっき、スズネやヤクモと会話していた夢の世界に似ているような気がする。
ふと思って、自分の姿を確認すると、狼をモチーフにしたような豪華な衣装に身を包んでおり、身体の大きさもひとまわりもふたまわりも大きくなったような感覚がある。
「よっ! ちゃんと来たな、エラいぞ」
「ほんまに、ご足労いただいて恐縮やわ」
手を挙げるヤクモと、丁寧に頭を下げるスズネ。
二人とも、さっきと同じ神職の服をまとった中学生サイズの大きさだった。
誓矢が自分の姿を指さして説明を求める。
「これって、どういうこと? 正直、僕の趣味じゃないんだけど……」
「その外見は
「……っていうか、人間界の人格が影響して、それほど威厳があるようにも見えないけどな……って、オマエもほっぺたひっぱんな!」
ヤクモのほっぺたから手を離した誓矢は、一度深呼吸してからスズネにこれからどうしたら良いのか尋ねた。
「せやな、ここで
「天照大御神──?」
スズネに促されて、とりあえず歩き出す誓矢。
二人の案内に従って光の園を進んでいくと、遠くに巨大な神社のような建造物が見えてきた。
その建物に向けて歩きながら、スズネとヤクモが状況について説明してくれる。
「今回、セイヤはんをお招きしたんは、天照大御神様でございます」
スズネの説明によると、本当は天照大御神が人間界に赴くのが筋なのかもしれないが、天照大御神の縁の本体がある伊勢神宮から距離があること、誓矢とともに行動している複数の人間と縁を結んでしまうことを避けたいということ、そして──万一、怪物に襲われてしまう危険を回避する必要があったこと。以上のことから、誓矢を神界へ招くことにしたのだという。
「怪物に襲われる──って、さっきから、こっちを遠巻きに見てくる怪物っぽいのが、あっちこっちにいるんだけど……もしかして、攻撃しちゃった方が良かったりする?」
足を止めて誓矢が少し離れた場所にある光の樹を指さした。
すると、そのことに気づいたのか、怪物っぽい存在は慌てて木の陰へと隠れてしまう。
ヤクモが慌てて誓矢を制する。
「あ、あれも、ああみえてオレらと同じ下級の神様なんで、間違っても攻撃しちゃダメだぞ!」
「せやな、
「って、いうか。セイヤの神狼の力を見てちょっかいをかけてくるヤツらなんていねーから」
「……そんなに神狼の力って怖いの?」
誓矢の問いに、無言で頷くスズネとヤクモだった。
「セイヤはんの神狼の力の前ではうちら下級、中級の神なんか指先一つで消されかねませんしな」
「まあ、セイヤの人格を知っていれば、そう怯えることもないんだけど……って、またほっぺたひっぱんな! てか、今、別に悪いこと言ってないだろ!」
そんなこんなで、三人が光の園の中の建物に辿り着く。
建物は重厚な雰囲気で、かつ、神々しさも感じられる普通とは違う建築物だと誓矢にも感じられた。
スズネに促されて木製の階段を一段一段踏みしめて上っていく誓矢。
その視界の前に、フワッとした光が突如出現したかと思うと、次の瞬間、高貴そうな美しい女性の姿が現出した。
「天照大御神様にございます……」
スズネは誓矢に耳打ちすると右側に移動してゆっくりと床に跪く。反対側の左側では、同じようにヤクモも畏まり、それを見た誓矢はあからさまに動揺をみせる。
「え、ええ……?」
だが、優しげな微笑みを浮かべた女性は、誓矢の戸惑いを意に介すことなく、澄んだ音色のような声色で話しかけてきた。
「よく、ここまで来てくれました。神狼の力を宿した少年よ──」
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