第41話 「パワースポット……ですか」
「怪物には二種類いる」
その教授の視線に促されて、
「ええと、
教授はしてやったりといったような笑みを浮かべた。
「うむ、そう答えると思っていた。それも間違いでは無いのだが、私が今言いたいのは発生形態の分類についてだ」
「発生形態──ですか」
「そう、怪物は一体どこからどうやって発生するのか──今わかっているパターンは二つ」
それは、怪物たちによって襲われた人間が怪物化した種──『
「そして、我々の調査の結果、純粋種と変異種の分布に明らかな差が見られたのだ」
助手の
その地図は何色かの色のグラデーションで塗り分けられており、教授が純粋種と変異種の分布率だと説明する。
「これを見て君に気づけというのも難しい話だから結果から言ってしまうが、純粋種の分布率が高いのは神社や仏閣、教会などの宗教施設、さらには富士山のような自然信仰の対象も含めた、いわゆるパワースポットと呼ばれる場所なのだ」
「パワースポット……ですか」
「ああ、そして私たちがいる首都圏内にあり、かつ、もっとも純粋種の分布率が高いここ。我々はこのエリアを重点的に調査してみることにしたのだ」
そう言って、教授が指さしたのは『
○
誓矢たちを載せた自衛隊
『明治神宮調査隊』は光海教授が隊長を務め、副隊長が笠月助手、その二人だけで構成されている。護衛要員は誓矢の他に、
笠月が言うには、光海教授の謎の政治力によって実現した今回の調査だが、怪物の発生源と目される場所に突撃するという無謀極まりない作戦にかわりはない。そのため、怪物への対抗手段を持つ異能者の中でも望んで参加しようなどという者はほとんどいない。しかも、異能者たちの中でも孤立している誓矢をメンバーに加えるというのだ──そんな中で、護衛役に立候補してくれた光塚たちに、誓矢は心から感謝していた。
──シュイン、シュイン、バシュウッ!!
上部ハッチから身を乗り出した誓矢は、いつも通り両手の銃から光条を放ち、散発的に姿を見せる怪物たちを消滅させて、装甲車の安全を確保していく。
内部から笠月が声をかけてきた。
「このあたりは最近怪物掃滅作戦が行われたばかりだから、怪物の数は少ないけど、明治神宮に近づくにつれて、数も増えてくると思うから油断はしないでくれ」
「はい、わかりました」
「それにしても、君の力もやっぱり気になるね」
教授がズイッと、誓矢と同じハッチに身体を通し、至近距離から顔を見つめてくる。
「ナゼ君だけが、そのような強力な力を得ることができたのか。本当に興味深い」
「……近いです、車の中に戻ってくれませんか」
この短時間で、誓矢はなんとなく教授の性格がわかった気がしていた。
苦笑しつつ、笠月が助け船を出す。
「教授、氷狩君について調べたいのであれば、あとで安全な場所でゆっくり調査・研究すれば良いことですよ。今は、目前の明治神宮調査に専念してください」
「うむ、確かに笠月君の言うとおりだ」
そう言うと、ハッチから再び車内へと戻り、調査用の荷物のチェックをはじめる。
誓矢は笠月に向けて頭を下げた。
「まあ、礼を言われる筋ではないけど、僕も君の力には興味がある。自分も異能者だからね──フェンリルの力だっけ? それを宿したのは偶然なのか、それとも必然なのか……」
そこまで言ってから、笠月も先走りすぎた、と誓矢に謝る。
車内から光塚の声が上がった。
「そろそろ明治神宮の敷地内に突入するぞ、
「うん、わかった!」
誓矢は思考を切り替え、集中を周囲の警戒へと切り替える。
確かに、進行方向前方──明治神宮の中から、無数の怪物の気配を感じた。
「とりあえず、指揮官級はいなさそう──なら、先手必勝で一気に片付ける!」
誓矢は前方へと双銃を構え、頭の中で察知した怪物たちの気配一つ一つに照準を設定し、貯めた力を一気に放出する。
無数の光の銃弾が空中に複雑な弧を描き、明治神宮内に潜む怪物たちを消滅させていく──
「くっ、数だけは多い……でも、やるしかないんだ!」
誓矢の銃から何度も光が放たれる。
装甲車は誓矢をハッチの上に出したまま、明治神宮境内へと突入、そのまま敷地内を移動しつつ、全体の怪物の駆除を行っていった。
「怪物の……気配、なくなりました……たぶん、もう大丈夫……あとは、よろしく……」
ハッチからずり落ちるように車内へ戻ってくる誓矢を光塚と
「それじゃ、調査開始といこうか!」
教授の陽気な声に、
「それじゃ、すみません。コイツのこと頼みます」
厳原が装甲車に残る自衛隊員に頭を下げ、光塚とともにみんなの後に続く。
こうして、明治神宮内の調査は開始されたのだった──
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