秋の朝は既に寒い
肩に圧し掛かる重みが、昨日よりも重く感じる。中に入っているものは擦り切れた画材だけ。昨日慌てて取り出したマフラーは箪笥の臭いがして、私のくしゃみを誘った。
電灯の並ぶ土手沿いの通り。ビル群から十分ほど歩いた場所にある少し離れたこのバス停が、私のお気に入りスポットだった。人がおらず、高い物もなく、紺色を追い出すように東から攻め立てる陽光を遮るものはない。
秋の朝は寒い。ほっと息を吐けば、薄白の靄が口から抜ける。まだ秋使用のズボンの繊維を抜けて、風が突き刺す。眠い。眼とグラス、グラスの外気の温度差で、眼鏡が曇った。
バスはまだ来ない。
一昨日まで二十度を超えていた温かさはどこへ隠れたのか。
鞄の持ち手が、肩に沈む。どこか昨日よりも重く感じる。
ふと頭に今日のことが過る。この後私は、家に帰りシャワーを浴びて、仮眠をとり、学校に行って、名も知らぬ分かり手たちに自分の作品を見せるのだ。顔が熱くなる。あれを見せるのか。私の恥部ともいえるあれを。学校生活の集大成を。
秋の空は青く明るい。この空を作品にできたらと、私の感情が叫ぶ。
「青い、青い」と私は白く呟いた。
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