冬のあけぼの、六時過ぎ

 ふかふかのダウンの見えない隙間を通じて、冷気が肌を撫でる。反射で体がぶるると震えるが、未だ星々はじっと光っていた。空は紺から橙に移り行き、山の合間から暖かさが覗かせる。それを橋の柵に腰掛けながら、私はぼーっと見つめる。

 紺と橙をぼんやりと映す細い川を繋ぐためだけに、この橋はある。柵の両端にはこの橋の名前が彫られていたけれど、経年劣化で削れてしまい「実」という字だけが読み取れる。そのくせ柵だけは新品で、石橋のくせにアルミの臭いを漂わせている。唯一、橋の真ん中に取り付けられた街灯は、これから訪れる日の光を予期させるような暖色を灯らせ、私の頭を照らしていた。

 山から太陽が顔を出す頃、私は視線を川に移した。太陽の光が星々を飲み込んでいく様子が描かれている。川の左右で繁茂している雑草が川と土の境界を覆い隠し、そのキャンパスがまるで違う世界の出来事を映しているように見えた。

 口からは白い息と、白い煙が空に消えていく。最後の七つ星も朝に消えていった。

「朝が来た」

 穏やかな日差しに、私は嫉妬と羨望を感じるのだ。

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