パッと顔を照らす

 多分、今の私の瞳には、人の身体には収まらないほど大輪が咲いていることだろう。夜空を橙色に染める恒星は、水面に揺れて足元でくつろぐ。大きな岩と岩を繋ぐ一枚板の橋に腰掛ける私は、サイダーとコーラのペットボトルの蓋を手持ち無沙汰に開けたり閉めたりしていた。右手には私の育った町。左手には近いけど知らない町。間を隔てる太く深い川はいつもの仄暗さを潜めて彩られていた。

 コーラ派の私はサイダーを口につける。口内で弾ける泡が痺れにも似たくすぐったさを感じさせる。喉から背中へ透き通るような味は、私の舌には合わないけれど、一滴ずつ空気中に飲まれていくコーラに比べればふさわしいような気がした。

 ひゅ~っと気の抜ける音がする。もう少しで再び大輪が咲く。その光は私を照らすだろうか。コーラを照らすだろうか。サイダーを照らすだろうか。

消えて、光る。

サイダーには何も映らなかった。

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