閑々と、そこにいたなにかを主張する。

 空から降り注ぐ太陽光はふわふわと佇む木の根元に辿り着くまでの間に、いくつもの空気の層を超えて、黄色く柔らかくなっていた。幹の隙間を踊るようにすり抜ける風は、洗濯したてのタオルにも負けず、撫でるように私の頬に触れる。

 しばらくの間、自分が人間であることも忘れ、苔の上で微睡んでいると、かさかさと草が押しのけられる音がした。胡乱げに身体を起し、そちらを見やると、そこには三匹のウリ坊と一匹の母猪。

 私のいる場所には綺麗な長方形に掘られた貯水池がある。現代に至るまでに放棄され、忘れ去られたのだろう。そして、これが彼らの水飲み場なのだろう。

 彼らは私に一瞥くれると、まるでないものかのように、悠々と水面に顔を近づける。

 一匹のウリ坊が苔に足を取られ水に落ちそうになるも、母猪がすんでのところでウリ坊を口に咥える。無事助けられたウリ坊は、一歩一歩を小さく確かめるように踏みしめると、今度こそ水を飲み始めた。

 ウリ坊たちが飲み終えると、ようやく母猪が飲み始める。ウリ坊たちが心配だったのだろう。

 ウリ坊よりも多くの水を飲み切ると、母猪はゆっくりと向きを変え、森へと歩いていく。ウリ坊もそれに続き、終ぞ私のほうを見ることはなかった。

 私は彼らの眼中には入らなかった。それが、私が自然社会のものであると錯覚させてくれた。

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