下に気を付けて歩こう

 傘を差して階段を上る。階段はその先を折り曲げ、工事区画の下を通る歩道橋へと続いていた。天井が低く、小学生にとってあまりある身長では腰をかがめないと、頭が危なかった。

 天井には橙色を灯す小さな電球が一列に連なり、足元にはそのための電線が乱雑に床を這っていた。

 電線に足を取られないように、中に水が侵入して重くなった長靴を上げる。工事現場の足場のような、下が透けている歩道橋からは、はるか遠くにある地面が、雨によって霞んで見えた。

 突然、カンカンという鼓膜を揺るがす轟音が上からした。こんな雨の中なのに工事をしているのか、と私は驚いた。ヘッドフォンを着けていなければ耳が危なかったかもしれない。

 短かった歩道橋もわたり終え、私はまた階段を上っていく。

 ランドセルが少し、重くなったような気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る