河川敷で叫ぶ少女

「バカヤロー!!」

 文化祭の準備で遅れた下校時、橋の下からそんな叫びが聞こえて来た。びっくりして橋の下を覗くと、川岸に一人の少女が立っていた。恐らく自分と同じ学校だと思われた。

 遠くからでは彼女がどんな表情をしているのかわからなかった。自分と同じ学校の、知らない少女。果たして泣いているのか、笑っているのか。

 どうにも気になって、少しばかり彼女の様子を見ていた。

 彼女は踵を返すと、土手の階段を上り始めた。叫んだことで、そこでの目的は達成したのだろうか。

 一段飛ばしで階段を上りきると、少し離れた場所にある、一つ隣の橋へと向かった。

 斜めから射す夕陽によって橙色に照り返る肩まである髪は吹きさらしの風でゆらゆらと揺れていた。

 その子は暫くして、土手の向こうへと消えていった。使われなかった隣橋を見やって、ようやく夕日が僕と水平になっていることに気づいた。

 名前も顔も知らないただ同じ学校なだけの誰かに僕は随分と見惚れていたな、と思わず苦笑してしまった。

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