陸に打ち上げられた廃船の隣で一休みする少女

 今日は中学校の創立記念日だった。平日の真ん中にある浮いた休みの日に、ふと思い立って、私は家を出た。夏にふさわしい涼し気な白いシャツと、膝まである水色のスカートを履いて。

 私の街は海辺の港町だった。魚が都心の魚畑によって100%養殖になってから、港はすっかり寂れて、海に浮かぶのは誰も使わなくなった、誰も処理をしない錆びた船だけになった。

 そんな船を横目に誰もいない海沿いを歩いていると、ひと際大きな漁船が陸に打ち上げられていた。海に浮かぶ船は飽きるほど見た事があるが、陸に浮かぶ船は見たことがなかった。こうしてみると随分大きいな、と私は思った。船体の側面に、濡れていたであろう部分と、そうでない部分の境界に塩の線が引かれていた。それは私の身長よりも遥か上にあって、陸にいるのに、海の中にいる気分になった。

 そうして船をぼうっと見ていると、額から流れた汗が頬を伝って顎に垂れ下がった。周りに日陰を作ってくれるようなものは何もなかった。私は仕方なく、船の影に隠れた。全体が見えなくなり、船は更なる迫力をもって私に覆いかぶさってきた。

 私は恐る恐る船に触れてみた。その日初めてプールに手を入れた時のような、そんな冷たさが私の掌を包んだ。

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