図書館で勉強でもしようか

 湿気を掻き分けながら足を動かす。ようやくたどり着いた場所は、家から二番目に近い図書館。自転車を止め、スタンドを立て、鍵をかける。そうして扉を開けると、中から乾いた冷風が勢いよく吹き出てくる。

 公民館に併設されたその小さな図書館は、人が少なく、勉強に集中できるお気に入りの環境だった。

 いつもの席に座り、勉強道具を取り出す。その最中に、ちらっと斜め前に座る女の子に目を向ける。

 その子は今日もいた。

 名前は知らない。ただ歳が僕の一つ下で、僕が数か月前まで通っていた中学校の学生だということは知っている。

 どこの高校に進学する予定なのかは当然知らないけれど、いつ見てもすらすらと問題集を進める様子から、僕と同じ高校に来る可能性は少なくはないはずだ。

 もし高校で会うことになったら声をかけようか。向こうは僕を認知しているのだろうか。

 そんなことを頭の片隅に残しながら、夏季課題を終わらせていく。

 夏が過ぎ、秋が吹いて、冬が枯れて、新しい春。すっかり習慣になってしまって、僕は彼女が来なくてもその図書館にやってくるようになっていた。受験期が過ぎたころから見なくなっていた彼女が久しぶりに現れた。

 その子は僕の高校とは違う制服を着ていた。

 まあそんなこともあるか、と僕は思った。

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