第213話 娘? (3)

「エルさん、どうしよう? か、一君が怒っている。怒っているからどうしよう? エ、エルさん怖いから助けて」と。


 美紀の声、悲痛な声音で、エルに助けを求める声、台詞が、僕の耳へと聞こえてくるけれど、お構いなしだよ。


 僕はいくら美紀の奴が、泣き、喚こうと、許す気はない、ないのだ。


 だからズンズン、ギシギシと、和室。


 そう、和室の奥にいるだろう、美紀の許へと向かう。


「一樹ー! もしかしてあなた? 美紀さんを洋子ちゃんの前で叱り。殴るつもりではないでしょうね?」


 部屋の奥へと向かう。


 移動をしている僕の目の前に、妻が、エルが、仁王立ちで立ち塞がり。


 僕の和室への侵入を阻止しようと試みる、ではなくて。


 僕自身が良く目を見開き確認をしてみると。


 エルの後ろ、後方、背に隠れ、怯え震えている美紀の姿が僕の両目に映るから。


「わりゃ、あああっ! 美紀ー! 何を考えちょぅるんじゃ。わりゃ、ええかげんにせいよぅ!」


 と、声を大にして叫び、美紀の事を罵倒しながら、荒々しく掴みかかろうと試みると。


「はぁ、あああっ! 喝ー!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る