第178話 えっ? 彼女?(10)

 だから僕もそいつらの後を追うように、アメ車独特のⅤ8サウンド。スラッシュの音。爆音を甲高く出し、吐きながら。その場を後にするのだ。


「……翔子、俺眠たいんじゃけれど。お前を送った後、帰りに。もしかすると? 居眠り運転するかもしれんけぇ」と。


 まあ、車内で僕は相変わらず。助手席に座る翔子に不満を漏らしながらだよ。


「……ん? ああ、それならば。私のマンションに泊まって、朝帰れば良いよ」と。


 深夜のお迎えにいく。いった日。アッシー君になった日は、何故か、僕の翔子のマンションへのお泊り。無礼講。逝くことが許される。許可してくれるから。ついつい僕は、年甲斐も無く、と言うか。翔子から見たら僕は未だ子供であり。弟ぐらいにしか思っていないと僕自身が思っているから。声を大にして叫ぶ。


「うそぉおおおっ! よっしゃぁあああっ!」とね。


 僕は歓喜! 歓喜なのだ!


 だって翔子のマンションにお泊りと言う事は、『アレ』を、『アノ事』を、する許可を頂いたと言う事だから。


 僕は、その都度、本当に子供みたいにはしゃぎ、歓喜した記憶があるのだ。


 でも、ここ数か月は何の連絡。御無沙汰も無い。電話が深夜に鳴らない状態だったのだ。


 翔子の奴からね。


 なのに、今更、僕に別れてなどいない。とか、別れる気はないとか、言わないで欲しい。


 僕はエルと結婚。新年、年を明ければ結婚式もあげる予定……。


 もう既に数か所の式場を見て回り。営業の人から話しも聴き。予算の事も二人で尋ね。夫婦仲良く。式場選びもしている最中のだから。今更勘弁をして欲しいと思っていると。


「……一樹、私。三ヶ月、アレが無いんじゃけれど。どうしたらええ……」と。


 翔子が小さな声で僕に囁いてきたのだ。周り。


 僕のボンゴエアロカスタム仕様と翔子の周りを歩く。歩行をしている人達に聞こえないように囁いてきた。


 だから僕は、それを聞き。開いた口が塞がらなくなるのだった。


◇◇◇

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