第176話 えっ? 彼女?(8)

 慌てふためきながら、酔っ払いの翔子の奴を迎えにいった物だ。


 でっ、着けば。本当に道路際にトヨタや日産のハイソカーが停車しているのだよ。自分達に車。車内から『チキ、チィ。チキ、チィ』とアンプからスピーカーへと、あの当時流行りのポピュラー音楽を繋げ。車窓から外へと音楽が外へと大きく漏れ聞こえるくらいの音量。ボリュームを出しながら。ミュージックに負けないくらいの声音で。


「お姉さん。お姉さん」


「ドライブ。ドライブ」


「ドライブに行こうやぁっ!」


「俺らとぉっ!」



「お姉さん。儂らが」


「俺らが」


「家まで送っていちゃるけぇ、車に乗りんさい。乗りんさい。お姉さん」



「お姉さん。お姉さん達、酔ちょるんじろぅ?」


「儂らが」


「俺らが車で家まで一人ずつ送っていちゃるけぇ、乗りんさい。お姉さん達……」と。


 ヤンキーの兄ちゃん達、不良のお兄さん達は、翔子と仲間達。酔っ払いのお姉さん達に優しく手招き、微笑み。もう、それこそ、自身の目尻を下げ、鼻下を伸ばし。本来はオオカミ男の顔をしている筈なのに。自身の本来の飢えたオオカミ男の顔が、隠れてしまうほど。自身の顔を緩ませながら。


 翔子と仲間達のことを手招きしながら誘う姿が。お迎えにきた僕の目に、瞳に映るのだ。


 だから僕は、そいつら。ヤンキーの兄ちゃん、男達が横付けしているハイソカーの後ろに、僕が乗ってきたワインレッドのシボレーカマロZ28を着け。


〈パッ、パ、パ〉だよ。


〈パン! パン! パッ!〉と。


 僕は自身の載るシボレーカマロZ28のホーンをリズム良く叩きながら鳴らして、不機嫌極まりない声音で。


「翔子、迎えにきたぞぉっ! 早くこっちにこいやぁっ! 儂は、早ぅ。帰りたいんじゃけぇっ!」


 声を大にして叫びながら呼ぶのだ。


 僕自身も明日は仕事。商い。販売業をしないといけませんからね。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る