第174話 えっ? 彼女?(6)

「(……じゃ、えぇよ。迎えに込んでも……)」


「ああ、そうか。じゃなぁ、翔子。お休み……」と。


 僕がここまで酔っぱらい女に、苦笑を浮かべながら告げればね。


「(ええもん、ええもん。私ら今から。引っ掛けの車に乗って送って帰ってもらうから。じゃ、サヨウナラ。一樹……。また今度……)」


 こんな言葉、台詞を僕に告げて脅してくるのだ。元カノの癖に翔子の奴はね。と、なれば? 


 僕自身も眠たいから気だるげに、自身の目を擦りながら『ハァ~』と、大欠伸しながら翔子との会話していた筈なのに。


『パチン!』と、自身の両目、瞼が大きく開き──。


「お前、何考えとんじゃ? 頭、可笑しいんか?」と。


 僕自身の声音が、完全に怒気を含んだ荒々しく。重たく低い声……。


 そう。皆も覚えているとは思うのだが。僕とエルとの、初めての夫婦喧嘩の時の声音……。


 まあ、家のエルは、宇宙人さんで、元勇者。将軍さまだから。僕自身が寝技。男の武器を使用するまでは一方的に負け、敗戦を期した時の荒々しい声へと変身しながら翔子の奴へと問いかけたのだ。


「(……ん? 別に変じゃないよ。だって一樹は、自分自身の彼女が、女がどうなろうと知ったこちゃじゃ、ないんじゃろぅに? ……それに今だって、公衆電話の向こう側。車から。『お姉さん。お姉さん』と、私らの事を手招きしながら。ハイソが三台停まっとる。停車して、窓から『お姉さん達、遊びにいこう』、『飲み会の帰り? 儂らがおくちゃるけぇ。家まで……』、『だから、おいでぇ~』と。一樹と違って、私らに優しく手招きしてくれる。手を差し伸べてくれるけぇ。今からいくけぇねぇ。じゃ、サヨウナラ、バイバイ、一樹。永遠に……)」


 でも、これだよ。翔子の奴は、僕がいつも憤怒しながら告げても、反省の色などない。逆に僕をこんな戯言を漏らしながら脅してくる始末なのだ。


 だから僕も、自身の顔色を変えながら。


「翔子、お前ぇえええっ! 八丁をグルグル回りょぅる車に女が乗ったら。どうなるのか? お前は知っちょるのかぁあああ⁉」と。


 僕が翔子へと罵声を吐く台詞はこれだけでは収まらないのだ。


 翔子の奴が余りにも突拍子もない戯言を告げてきたから。


 僕の憤怒は収まりつかないのだ。


「──お前のような酔っ払い女が、引っちゃん。ナンパしょぅる車に乗ってみろ。お前の連れ共々、強姦! 回れる! 凌辱されるぞ! それに下手をしたら。乗った車の奴等に、地元。家まで連れて帰られて朝まで。そいつの地元の奴等から凌辱行為を受け。回され続けて泣くようになっても、俺は知らんぞ!」と。


 僕は翔子に釘を刺し、諫めたのだ。僕達の地元の市。繁華街。八丁堀をグルグルと左周り。徘徊しながら。獲物を探す……。


 そう。若い女達をナンパし。自分達の車。ハイソカーに乗せようと誘う輩の、誘いに載るなと。本当に大変なことになるから。後で本当に泣くようになるからやめろと。


「……翔子、わかったな? 俺の言うことを聞いて、友達と一緒にタクシー拾って帰れ。今直ぐに。わかったなぁ?」とも、再度忠告。釘も刺したのだ。


 危険極まりない行為を翔子の奴が、ばかみたいに酔った勢いで使用としているから諫めたのだ。


 まあ、僕の話しを聞けば、大変に大袈裟なことを言っている。告げているように思えるかも知れないけれど。


 本当にあの当時。今は、令和の時代は、どうだか? おじさんの僕にはもうわからないけれど。


 あの当時、昭和の時代の終わりの頃は、広島市の繁華街。八丁堀を自身の愛車でグルグルと左回り。徘徊するのが、ヤンキーと呼ばれる若者達の間で流行っていたのだ。ナンパをするのも含めてね。

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