第172話 えっ? 彼女?(4)
「一樹、綺麗な女性(ひと)じゃね。えぇ~と、もしかして、一樹の彼女?」
「えっ? あっ、う、うん……」と。
翔子に背から問われ、僕は俯きながら答えたのだが。エルは僕の彼女ではなく。家の両親にもちゃんと紹介をした宇宙人の嫁。妻、女房。奥さまだから。
僕は自身の俯いた顔を上げ、後ろを。後方へと自身の頭を動かし。声をかけてきた翔子へと視線を向け。
「俺結婚をしたんだ。だからもう二度と家に電話をかけてこないでくれ、お願いだ」と。
僕は翔子との曖昧な仲……。
そう。未だに付き合っているのか、もう既に別れ、離別をしているのかわからない曖昧な関係に区切りをつける台詞を翔子へとハッキリと告げる。告げたのだが。
「──私は、一樹と別れる。別れてあげると、一度も言ってはいない筈だと思うけれど。一体どう言うことなん?」と。
翔子は車。ボンゴの運転席側のドア越しから自身の腕を組みながら、荒々しい口調で、元カレの僕へと、別れた覚えはないと告げてくるのだ。
だから僕は、『トホ、ホホ……』と、『困ってしまって、ワン、ワン』な状態へと陥ってしまったのだ。
だって僕の中では、翔子との恋愛関係、恋人同士との関係は、もう数か月前に終わっていると思っていたのだ。
彼女、翔子自身も、仕事が忙しい。だから夜逢って話し。デートをするのは次の日。仕事に差し支えると拒否してくる。
休日の日にしても、「今日二人で逢おうか?」と。
僕が、彼女が、一人暮らしをしているマンションへと電話し、迎えにいくと告げれば。
「ごめん、昨日友達とディスコ行っていたから。仕事帰りが遅くてね。未だ眠たいし。疲れた……。それにお酒の方も未だ抜けてないから。頭の方も痛いから……」と。
本当に翔子の奴は眠たそう。と、いうか? 僕と話しをするのが大変に面倒、嫌悪感、気だるげに電話の向こうから呟いてくるのだ。
それでも僕は、年上の彼女なんて、こんな物かな? と、自分自身で思い納得をしながら。
「──今から、翔子の家にいこうか?」と。
僕が尋ねれば。
「今、と言うか? 今日はそんな気分ではないから。また逢うのは、今度でいいでしょう?」と、告げてくるからね。
「ああ、わかったわぁ。また今度でええわぁ。じゃ、電話切るけぇ。じゃのぉっ!」
〈プチン!〉と。
僕が電話を荒々しく切る音と。僕の血管が切れる音が同時に聞こえる日が多々続くから。
僕が翔子に対して不満を募らせ、面倒になり。電話もかけることも逢うこともなくなったのだ。僕の方からはね。
でも、時々、翔子の方からは電話が鳴り、響くことはあった。
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