第171話 えっ? 彼女?(3)

 そして顔色も変わるから。


「…………」と。


 僕が沈黙をする。始めるから。


「どうしたの、一樹?」と。


 エルが自身の首を傾げながら問いかけてくるので。


「い、いや。あのね」と。


 僕が動揺をしながら呟いていると。


「何もないですよ。お姉さん。お仕事頑張ってくださいね」と、アイツ……。



 僕の元カノの翔子が。元カレの僕が動揺をしている様が面白いのか? クスッと、薄ら笑いを浮かべながらエルへと労いの言葉をかけ店内。売り場へと戻っていった。


 だから僕は、翔子の背を見ながらホッとして安堵。良かったと思う。


「……ん? 何が良かったの、一樹?」


 先程から元カノの翔子の出現に困惑、動揺。汗! 汗! している挙動不審僕に対してエル派、また自身の首を傾げながら問いかけてくる。


「……ん? う、うん」


 僕はエルの問いかけに対して、このように頷き。


「な、何でもない。何でもないよ。エル……。じゃ、僕は、車の中からこちらの様子を窺っているから。お客さんが沢山集い。山ができたら。慌てて戻ってくるから」と。


 エルに僕は、いつもの日常、作戦通りで商い。商売を始める旨を伝えるのだ。


「うん。分かった一樹! 私今日も頑張るから!」と。


 家の奥さまは、自身の華奢な掌をグゥと力強く握り。両腕でガッツポーズを決めて、今日のお仕事。商い。我が家の財を築き、糧を得る為の販売業を頑張るのだと、決めポーズ! 威勢のある様子を、夫の僕へと可愛く。いつも通りに魅せてくれたから。


「頑張って、エル」と。


 僕は家の奥さまへと告げて、足早に売り場を去るのだ。元カノ翔子にまた声をかけ、話しかけられるのが恐ろしくて仕方がない。僕だから。



 ◇◇◇◇◇

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