第82話 勇者の気落ち、落胆。涙(3)

「う、うん、わかったよ。エルさん……。俺はもう聞かない。尋ねないよ」と。


 自身の頬を可愛く膨らますエルさんへと告げると。


(エルさんは本当に俺の物になったんだ……。何だか信じられないな)と。


 僕は自身の脳内で独り言を呟く。


「(そうですよ。陛下……。私はもうあなたの物です……。だから今後は私はあなたの味方であり、伴侶なのですから。可愛がってくださいね。陛下……)」と。


 エルさんは、自身の口からではなく。


 僕の脳内へと直接話しかけ、嘆願をしてきたのだ。


 僕に自分のことを幸せにするようにと。


 だから僕は「うん」と、頷いた。


 そして「やった! やった!」と歓喜する。


 だって僕のエルさま、宇宙人さま、精霊さまはね。


 この世の者ではないぐらい美しいじゃなくて!


 僕のエルは宇宙人! 異世界人! 精霊! 女神さまであり。


 この世の者ではないから本当に美しいのだよ。


 そう僕は?


 世界各地の伝説の皇帝達や古の英雄達と変わらぬような美女を!


 この昭和と言う時代に手に入れ、己の所有物にした英雄さまだから。


 僕は歓喜だよ!


 もう僕自身の顔の緩みが止まらない。


 そう、僕の顔が溶けてしまうぐらい嬉しくて仕方がない。


 だって僕はもうすでに、女神さまを、妊娠をさせてしまうほどの、大英雄さまなのだから凄い。


 まあ、凄いけれど。


「…………」


 あれ、僕とエルさんの子供は一体何処? 何処だっけぇ? じゃないか?


 一度死んだ僕の魂……。


 そう、エルさんと僕の子供の、命の灯火、魂と言う奴が。


 僕の命の灯火になるんじゃないのか? と。


 僕はふと先ほどエルさんが教えてくれた【蘇生魔法リザレックション】の原理──魔法のシステムを思い出し。


 僕達二人の最初の子供行く末……と、言うか?


 行先が僕の魂となったがために。


 僕とエルさんの最初の子供は死んでしまったんだねと。


 僕は肩を落とし、落胆をしながら思い。


 自身の気力と身体の力が完全に抜けた状態……。


 唖然、呆然としながら、自身の両目からポタポタと涙の粒が垂れ、落ちるのだけれど。


 それと同時に僕の耳へと。


「ううう……」と嗚咽が聞こえるから。


 僕は声の主へと、涙を流しつつ視線を変えると。


「ごめんね、エルさん……。本当にごめんなさい……」と。


 僕はエルさんへと力の無い声音で謝罪をする。


 だって僕は、エルさんとの最初の子供の命!


 そう、僕は魂を奪い蘇生をし、生き返った訳だから。


 僕の胸に甘える行為をやめ、畳の上にしな垂れ、泣き崩れる妻に対し謝罪をした。


 本当に心から許して欲しいと思う。




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