第51話 古代から伝わる勇者と魔王の卑猥なお話? (4)

 まあ、いやだけれど。


 私自身は、やはりそう言う訳にはいかないよね?


 私勇者エルは、この男を殺害し、首を獲る為に、自身の母国から派遣をされた総司令官であるのだから。


 私がこんな事を……。



 そう、一人の女性としての幸せをとるような事をすれば。今迄沢山死んだ家臣や兵達に申し訳が立たない。


 だから私は自身へと。


「馬鹿! 馬鹿! 勇者エルの馬鹿!」と。


 自身の頭を叩きつつ呟く。


(このひとは、私の憎むべき相手である魔王なのよ!)とも思いながら。


 私は自戒もするのだが。


 やはり私は、自身の足元で「ぐぅ、ぐぅ」と涎をもらしつつ、気持ちよさそうに寝ている。


 このひと、陛下の事が気になって仕方がないようだと。私が自身の脳裏で思うと言う事は?


 私自身が思いのほか、この手の卑猥な行為! 拷問に対して弱い者であり! 直ぐに堕ち! 敵の物へとなってしまう軟弱、かよわい女……。



 そう、私は案外夫を尻に敷く強いタイプの女性ではなく。夫に対して良く尽くすタイプの、情の深い女性のようなので、これから私自身は、(本当にどうしよう? どうしたら良いのでしょうか?)と、困惑しながら悩んでしまう。


 だから私は、自身の両手を顔の前で握り、天を仰ぎ祈る!


(ああ~、神よ~! 私は本当にどうすればいいのでしょうか~? 教えてください~?)


 私は声を大にして叫びたい衝動に駆られる。


 でも私は、グッ! と堪え、耐え忍ぶしかない。


 だって敗戦者になった私が悪いのだからと、言って自戒……。


 まあ、私自身もいつまでもくよくよとしながら嘆いている訳にはいかないから。


(さて、どうする?)と。


 私は考える人になりながら。


 今後どのようにして生きていくか? を思案し、始めるのだよ、と言いたい私なのだが。


 やはり私は、自身の純血を、許可なく奪った魔王を許す事は出来ない。


 だからいざとなればこの男……。魔王と刺し違えてでも、私はこやつを殺してやるつもりでいると、覚悟を決めれば。


 私は抜き足、差し足、忍び足で。睡眠している魔王の背後へと回り込む──。私、勇者エルなのだ。


 ◇◇◇

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