第13話 真冬の怪奇?(1)

 ガシャン!


 ガシャン!


 ガサガサ、ガシャン!


 ガシャン!


 ガリガリ……と。


 作業中の僕の耳へと今度は、木枯らしに吹かれた草や花、木々の擦れ、当たる音ではなく。


 今度は鋼同士が擦れ、当たる音と。鋼が地面に擦れ、引きずられるような音が聞こえてきたような気がするから。


(……ん? あれ、可笑しい?)


 僕は瞬時に思えば、自身の首を傾げる。


 でも、また直ぐに音が止んだ! 消えた!


 だから僕の気のせい。気の迷い。


 まあ、先ほどから僕は、自身の目に映らない物に対して五感が、妙に過剰反応を示しているから、そのせい?


 まあ、僕の空耳と言う奴なのだろう? と、僕は思う事にして、止めた手──。


 そう、僕はまた出店の片付け、作業と言う奴を再開する。


 でも僕の五感はやはり、自身の背、背後が妙に気になるのだと。僕の脳へと指示をだすから。


 僕の口の方が自然と開き。


「多分、俺の気のせい。気の迷いだよね? あっ、ははは」と、豪快に笑って誤魔化しながら作業を続けるのだよ。


 やはり僕は、(お化けなんていないさ!)と、自分自身に言い聞かせるように作業を黙々とこなしていくのだ。


 そう、僕自身は真冬で寒くて仕方がないのに。更に自分自身の背筋を凍らせながら畏怖──。恐れ慄きながら作業を続けている僕なのだが、不満ばかりが募って仕方がない。


 だって今は冬だよ! 夏場じゃないのだよ!


 なのに、何故? 僕の耳に得体のしれない物音……。


 そう、金属音が僕の耳へとやはり聞こえてくるのだよ?


 僕は別に、他人を殺害するような、恐ろしい事はした事等無いのに。また音が──!


 そう嫌な音! 怖い音!


 僕自身の身の毛が逆立ち、畏怖、震えるような音が。僕の耳へと段々と大きく聞こえるような気がする。


 だから僕は、今度は大きな声で「ラッ、ラララ~♪」と、鼻歌を歌い。


 僕の瞳に映らない者へと、自分の存在をアピールしながら、素知らぬ振りをしつつ作業を進め、おこなう。


 でもね、この通りだよ!



 ガシャン!


 ガシャン、ガシャン!


 ガリガリ……。



 そしておまけで更にガシャン! と。


 僕の耳へは相変わらず聞こえてくるのだ。怪奇音がね。


 それもさ? 僕の背後に段々と近づいてきている気がする?


 だから僕は鼻歌を歌う行為を辞めて、恐怖の余り。今度はこんな言葉を口走る。


「いや。それにしても、今日は本当に寒い。ああ、寒いなぁ~」と嘆き。


「僕の周りは本当に暗く。周りが見えない。確認ができないよ。だから僕は早く片付けを終わらせて、お家に帰ろう。そうしよう」、


「うんうん」と、僕は最後に首肯……。


 自分自身ですら、何を言っているの、俺? と、思う言葉を口ずさみながら僕は、相変わらず、自分自身に言い聞かせながら。


(お化けなんていない! お化けがいるなんてうそさー! 皆でたらめだー! 他人の見間違い! 目の錯覚と言う奴で! 勘違いと言う奴だよ! だから俺! 変な音に対して気にするな! 絶対に大丈夫だから! 心配するな!)と、僕は自身の脳内で叫びつつ鼓舞──叱咤激励をしながら、片づけの作業を続ける。


 でもさ? 先程も僕が説明をした通りでね。やはり僕の両耳聞こえている怪奇音なのだが。僅かに聞こえていたはずの金属音が段々と大きくなってきている、だけではなく。


 今度はね、僕の耳に足音まで聞こえてきだしたのだ。


 それも、自身の力の無い身体で強引に足をズルズルと引きずりながら、無理に動かしつつ歩行を続けていると言った感じかな?


 まあ、そんな状態で歩いている音が、作業中の僕の耳へと、ハッキリと聞こえる、


 それも、他所に向けて歩行し、暗闇の中に消えてくれればいいのだが。


 その怪奇な金属音と足音は──。


 ガリガリ!


 ズルズル、ガリガリ……。


 ガシャン!


 ガシャン! と、怪奇な音を立てながら、俯き、自身の背を丸め、片付けの作業を進め、こなしている、僕の耳へと聞こえ──。自身の背後に確実に迫っているのがわかるから。


「どうしよう?」、


「どうしたらいいのだろう?」


 僕の口から自然と声が漏れてしまう。


 だって僕は、自身の背後から聞こえる怪音に対して、当たり前に恐怖を募らせ畏怖……。


 まあ、怯えている訳だから。


 僕の口から自然と恐れ慄いている声が漏れ、額や背からは、冷や汗が湧き、タラタラと垂れ、流れるのは致し方がないことだと思う。


 今が凍るほど寒い、冬の夜であるとしてもだぁ。


 僕は怖い物は、怖いのだ!


 自身の汗!


 そう、冷や汗! と言う奴で、己の肌着がビショビショに濡れようとも。自分の背後に迫りくる怪音と、足音に対して僕は恐れ慄いている訳だから致し方がないのと。


 僕の声──。嘆きの声音の方も更に大きな声へと移り変わるのも仕方がない事だと思う。


 もうそれこそ?


 僕は大変に大袈裟なくらい大きな声音で叫ぶ。


「頼むから、僕の許へとこないでくれ! お願いだ! 頼むよ!」と。


「僕の許へとくるな! くるんじゃない! くれば殺すぞ! 貴様―! わかったか!?」と威嚇した。


 それでも僕はやはり、背後に迫る物が恐ろしい。


「お前! いや、貴女! まあ、貴方の性別はどちらかわからないけれど。僕と貴方とは無縁……。僕は知り合いでもない、赤の他人だから、こちらに向かってこないでくれるかな? 頼むよ! お願いだよ! 許してください」と。


 僕は背後に迫る物に対して、何も悪い事等していないけれど謝罪、許しを乞うたのだが。


 僕に迫りくる物の気配は一向に消えてはくれないから。


「あ、あのね、君? 君が向かっている前方には人が……。そう、僕と言う人がいるのだよ。だから謎の物体エ○クスの君は。直ちに反転をして方向を変えて欲しい。そして何処か遠くへいってよ! お願い! お願いします! 頼むから御代官さま! 物の怪さま! お願いします!」


 遠くから僕の声だけ聴けば、冗談を言っているように聞こえるかも知れないけれど。


 僕自身は至って真剣……。


 とにかくさぁ、僕の背後に迫る何か? 物に対して冗談交じりで告げ、交渉……。


 僕は物体Xの受けを狙い、取りして、反転をしてもらいたから、更に大きな声音で嘆願、乞い。


 僕はその後、出来るだけ素知らぬ振りを装いつつ、今迄止めていた自分の両手を再度起動──動かしながら、またお片付けの作業の続きをおこない始める。


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