第8話 こんな山の中の道路で事故?(1)

 キィ、イイイ~~~!


「バ、バカやろ~~~! お前~! 死にてぇのか~~~?」


 この農協に勤める人達全員が完全に帰宅の途につかれた後も僕は一人この暗闇の中──商品の箱詰めの作業を黙々とおこなっていると。


 作業をおこなっている僕の耳へと車の急ブレーキの音──。タイヤが鳴く音が聞こえてきた。


 だから僕は瞬時に車……。多分マフラー音からすると大型トラックだと思われる乗物の急ブレーキが鳴った方へと視線を変えると。


「バ、バカやろ~~~! てめえ~~~! 死にてぇのか~~~!?」


 大型トラックの運転手だと思われる男性の荒々しい注意が僕の耳へと聞こえるから。


(事故かな?)


 僕は思う。


 でも直ぐにトラックの運転手が『てめえ、死にてのか?』と荒々しい物言いで通行人へと注意をしていた事を思い出すから。


(大変な事故にならなくて良かったな……)


 僕は大型トラックのフォグランプの光の反射でぼんやりと見える運転手の容姿……。


 そうトラックの運転手が窓から自身の身体を乗り出して、前方を見詰める様子を見ながら脳裏で呟けば。


 僕はまた視線を変え──自身の足元にある箱へと、お菓子や豆菓子、珍味が袋詰めされている商品を詰め始めるのだ。


 僕自身何かしら違和感を覚えながらだ。


 でも僕自身、それが何か分からないから、余り気にしないようにしつつ商品の片づけをおこなう。



(ここまで)



「チッ!」


「…………」


「おい! 女! 死にたくなければ気をつけろー! 馬鹿野郎がー!」


 ブッ、オオオ~。ブッオオオ~!


(……ん? あれ? トラックの運転手が『女!』と荒々しく怒声を吐いたけれど。相手は老人ではなく若い女性だったのかな?)


 僕はトラックの運転手が荒々しく吠えた言葉の内容を耳にしてふとこんな事を思う。


 だって僕は老人が左右の確認不足でトラック走行に気がつかず急な道路の横断をおこない轢かれそうになったものだと思っていたから。


 僕の予想に反した出来事が起きたのか? と思い。


 若い女性ならば夕刻──日が暮れてからの道路の横断ならば、大型トラックのあの大きなエンジン音……。あの煩いマフラー音やハイビームでのトラックのライトの光を見れば普通に若い人ならば、いくらこの辺りの道路がクネクネした蛇のようにカーブが多いとしても昼間とは違い、夜ならば車のライトの光で気がつく筈だ。

 なのに、何故女性は気がつかなかったのだろうか?


 僕はこんな事を思いつつ作業を続ける。


 でも、まあ、あれだよ? 人もトラックも大きな事故……人身事故にはならなったみたい。



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