第6話 また優しい声が(1)
ザクザク
ザクザクと足音……。僕の耳へと急に聞こえてきた。
(……ん? あれ? 人の足音が聞こえてくる……)
僕は自身の首を傾げながら思うのだ。だってこの辺りは人気のない場所……。
農協の建物以外は周りに民家がなく、山と雑木林、道路があるだけの場所でね、街灯もなく、漆黒の闇に覆われた場所だから、偶に道路を、峠を攻めるような勢いで自動車がテールランプと共に走り抜けていくだけの場所──。
それなのに人の足音が急に僕の耳へと聞こえてきた。
だから僕の心臓は『ドキ!』と大きく反応を示したと思えば。
『ドキドキドキ……』と心臓の鼓動が激しく動き、音を出しているのが僕の耳へと聞こえるから。
『ゴクリ!』
僕は自身の喉を鳴らしながら緊張……。
だから僕は片付けの作業の方も一旦中止──。自身の手を休めつつ、僕の後方へと迫りくる。
『カツカツカツ』と。
『ザクザクザ』の足音の様子を緊張しながら窺う。
「……珍味屋のお兄さん、お疲れ~!」
「お疲れ様~」
「頑張っているね~」
だけどこの通りだ。僕は複数の人達から労いの声をかけられただけ。
でも僕自身は未だ農協の購買部の方に従業員の人達が残っているとは思ってもいなかったのと。僕自身が出店していた商品などの片づけに集中──。沈黙しながら黙々と作業をしている最中だった。
だから僕自身が、自身の背後に購買部人達が接近をする迄、足音さえも気がつかなかったから。
『うわぁ、あああっ! 出たぁアアアッ!』と驚愕しながら叫びそうになった。
でも僕に話しかけてくれた言葉が『恨めしや~』ではなく。『お疲れ様~』と優しい労いの言葉だったから。
僕は声を大にして絶叫を吐かずに済んだ。
だから僕は、(ふぅ、良かった)と安堵すれば後ろを振り、優しい言葉をかけてくれた購買部の人達の姿を確認する。
う~ん、どうやら農協の購買部にはまだ複数の人達が店内には残っていたようだ。
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