第2話 配る膳と書いて配膳だ!
まずは徹頭徹尾個人の偏見マシマシで配膳という仕事を紹介しよう。
私が働いていたのは結婚式ができる大きな会場が3つくらいあるホテルで、ブッフェとかコース料理とか出る強めの謝恩会とか、年末になるとディナーショーとかをやっていたりした。
で、ああいう所でお給仕してくれる人がいますね? お皿をいいかんじに三枚くらい持ってきて、白いトーションを使ってワインの雫を拭ったりしている人たち。あのうちの95%が配膳人です。
大きな会場に一人乃至二人はホテルの社員さんがいますが、それ以外は全員ホテルとは関係のない庶民です(※個人の感想)で、ホテル側が「明日は15人くらい配膳人ほしいな~」って言うと、うちの会社のリーダーが「おっけー、15人ね!(15人で人間なら何でもいいよね!)」というような感じで我々を派遣する運びである。
うちの会社は海辺のホテルと癒着していたので、希望すれば毎日入れた。海辺のホテルには中華料理・フランス料理・和食の各レストランとバー、それから宴会場という5つの職場があり、今日は一日フランス料理ね~ということもあれば、朝5時から朝食ブッフェ、11時から宴会場で結婚式、その後会場を作り直して夕方から社交ダンスクラブの忘年会、終了は22時! みたいな労働基準法とか食べたことない! みたいな働き方も全然提案してくる所でした。
で、常に同じホテルで働いている配膳人というのは割と限られており、他は土日だけとか、長い休みだけ、とかなので当時は私を含めて6、7人がその海辺のホテルで朝から晩まで働いておりました。
あの、まじで朝から晩まで一緒なんですよ。デビューしたてのアイドルくらい現場が一緒なんですね。配膳人といっても、仕事は料理運ぶだけじゃなくて、150人の宴会だったらすべての皿を150枚棚から引っ張り出して用意して洗って、拭いて、コップも大量に洗って、拭いて、テーブルを倉庫から持ってきて、座席表みながら会場の形を作って、テーブルクロス引いて、その上に150人分のナイフとかフォークとかスプーンとか綺麗に並べて「疲れたから休憩!」って外の極小プレハブ小屋で煙草吸って「戻るのだるいな」「たまには社員にやらせようぜ」とか言って今日どこ飲みに行くか決めて「角煮が食べたいんですけど」「却下」とか言われて「おい!お前ら何してんだ戻れ!」って黒服(契約社員)が怒鳴ってきて「うぃ~」つってもう一本煙草を吸ってから戻って、黒服の偉そうなミーティング聞いて、でも黒服は何の役にも立たないので改めて自分たちでミーティング開いて、学生とか新人に「なんかあったら俺らに指示あおげ、絶対に黒服に聞くな」って厳命して、前菜出して、スープ出して、魚出して、ちいちゃいシャーベット(グラニテ?)出して、肉料理出して、大量にコーヒー作って、デザートと一緒に出して、皿洗って、お客様退場時の忘れ物チェックして、見目のいい子は(めちゃ前時代的)クロークで衣装の受け渡しして、残飯をポリバケツに投げ捨てて、皿回収して、洗って拭いて棚に戻して、机を倉庫に戻して、掃除機掛けて、一服してからゆっくりとタイムカードを押す、までが配膳人のお仕事なのです。めっちゃ長くない? 大丈夫? ごめんね? 蟻みたいだね文字が。
当時6、7人いたグループの中に若頭みたい人がいて、その人がめちゃイケメンでツンデレで当時27才とかで子供が3人いてスタイリッシュなジャイアンみたいに横暴だったので私はイケメンジャイアンと呼んでいた。で、その人の舎弟をやっていた。
他にも陰キャのスネ夫とか、パンツチェックさんとか、売れない大河俳優とか、無免許運転さんとかがいたんだけど文字数の関係で省略します。
私はその中で一番下っ端で、もち前の舎弟ムーブも手伝ってものすごくこき使われていたのだけれど、すぐ過呼吸で倒れるので、倒れると「倒れた~」「倒れったって」「おー」みたいな感じでイケジャイがどこかからやってきて「おら」つって私の顔にビニール袋を投げ捨ててくれたりした。「10分休憩な」とか言ってくれてやさしかったし「休憩終わったらゴミ全部お前が片付けろ」とか言ってくれて別にやさしくなかった。
そんなこんなで字数が限界なので、次回はイカれた配膳アイドルグループがどんな日常を送っていたのかもう少し詳しくお伝えしようかと思う。予定は未定だ! よろしく頼むな!
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