俺が冒険者として過ごす物語

新井澪

始まりの日

出発の日

「よし行くか!」と父親の形見である少し錆びた剣と今日のためにと母親が縫ってくれた帽子を被り家をでる。


「気をつけてねーーーー」

「ああ!行ってくる」と母とほぼ最後の挨拶を交わす。

「ここからは1人でやらないとな」彼"レイ"は父親で冒険者として活躍していた"グレム"に小さい頃から憧れを抱き、遂に念願の冒険者になることが出来たのだ。しかし冒険者になって数日後レイの父グレムは何者かに殺害されている現場をレイは見てしまった。


冒険者になって数日

「父さん!今日も冒険者としての訓練してきたよ!」

朝から家を出て少し離れた森で訓練をしていたレイが夕方から帰ってきた出来事であった。家に帰ると父親は背中に矢を打たれ床にうつ伏せで倒れていた。それを発見したレイは慌てて駆け寄る。

「ねぇ!!!父さん!どうした!!」と声をあげて倒れている父さんの体を揺さぶる。しかしグレムはうつ伏せのまま動かない、よく見ると矢が突き刺さっているのが目には入る。

「こ、これは?矢?!?!?まさか………………」

全てを悟ったレイはその場で膝から崩れ落ちる。実の親を何者かに殺害されている事実と尊敬していた1人の人物を失った気持ちでレイの心はぐちゃぐちゃになった。そしてレイは部屋に閉じ籠った。


数日後

レイの父グレムは、冒険者ギルドにより同じパーティーを組んでいた人物からの逆恨みということが判明した。しかしその肝心な人物が分からず放置状態だった。レイはもちろんグレムの妻である"リリア"が一番辛かったのだと思う。彼女が一番グレムの苦労や努力を理解している人なのに最愛の人を亡くす事は心に深い穴が空いたはずだろう。だが彼女は夫の死を受け入れ自分は夫の分まで長く生きると誓う。



そんな彼女が今することは自分と同じように心に大きな穴を空けその穴を自分で閉じることが出来ない、まだ子供であるレイを心づけることだ。実の親の死を間近で見てしまいレイの目にはその光景が焼き付いているのだろう。だが何時まで閉じ籠っていたってなにも解決しない、そう思ったリリアはレイが部屋からでるように促す。



「レイ?いつまで閉じ籠っているの?いい加減出てきたら?」

「………………」

「無言を突き通そうとしたって無駄だよ。お父さんが亡くなって辛いのは私だって同じなんだから。お父さんに2人の元気な姿を見せないと、それが私達のすることでしよう?そんな残された私達がこんな元気な姿じゃなかったらお父さんだって悲しむよ?」

「母さんなんてなにも知らない!おれが、おれがどれだけ父さんに憧れを抱いていたか。母さんは絶対に分からない」

「そうね。貴方が父さんに憧れていたのはずっと前から知っていたけど、どのくらい憧れていたかって聞かれると答えられないね」

「っ。だったら、ぼ……」

「それなら私がどれだけあの人を愛していたか分かるの?貴方が産まれる前からどれだけ、私達が付き合ってから結婚するまでの苦労や努力、貴方には分からないでしょう?それと同じ。だから私達が今まで努力してきたこと苦労したことを父さんに発表するときなんだよ!僕はこんだけやったよ!どう!ってね。そしたら父さんは良くやったなって天国から言ってくれると思うよ。それを目指してやっていこうよ」

「いや、俺が何をしても、、、」

「冒険者になって色んな場所に行って過ごしたいんじゃないの?何のために冒険者になったの?」

「それは、、父さんが見ていた景色を見てみたいから、、」

「そうだね。じゃあ貴方は今から何をしないといけないの?」


するとガチャとレイのドアの扉が開きレイが出てくる。するとリリアがレイを抱きしめる。

「ごめんね、母さん。もう迷惑しないから。きちんと夢を叶えてくるよ」

「うん!行ってきなさい!頑張ってくるのよ!」

そう言ってリリアはレイに剣を渡す。

剣を受け取ったレイの目から涙が頬を伝う。レイが受け取ったものそれは父グレムが愛用していた剣であった。





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最後まで読んでくださりありがとうございます。誤字脱字があれば教えてください


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