またね

またね、と言って

重ねた手の温もりを

今も覚えている


声だけしか聴けなくなってから

もう三年になるのだなぁ、と

それでもまだ繋がっていられることは

確かに幸せなことだろうけれど



またね、と言って

指先が温もりを残して

ゆっくりと離れていった


振り返り、振り返り

小さくなっていく

後ろ姿のそのひとに

ずっと手を振り続けた



またね、は、ずっと

魔法の言葉だったのに

呪文の効果は切れちゃったの?


パンデミックなんていう

どうにもならない現実

先の見えない不安と

寂しさに押しつぶされそうな夜



だけど、負けたくない

逢いたいひとに逢えずにいる

世界中のひと達と一緒に


またね、の呪文を

諦めずに唱えるよ


信じ続けるの

またね、と言って手を振った

あの日のふたりを


いつかきっと、と信じ続けるの

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る