げんこつの花

ほら、見て!

あんなに綺麗に

げんこつの花が咲いてる!


大きな声でそう言った母は

照れたように言い間違えに気づいて

あ、こぶしの花だった

と笑った


お母さんったら

わたしも思わず吹き出して

一緒に笑ったのは

もう、どれほど前になるか


今は亡き母の面影を白い花に重ねて

わたしはわざと

げんこつの花

と言い間違えてみる


わたしの中では

母の笑顔とともに

これはずっと

げんこつの花


ねぇ、いいでしょ


何年経っても

亡きひととの想い出は

わたしを優しく包む


咲き誇る白い花を見上げると

母のイタズラっぽい笑い声が

ふと

聴こえた気がした

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