第197話 健太の予想外の行動(1)

「……何故、あのひとが先鋒に、先鋒隊等にいるの? それも、ウォンの近くにいるの、あなたが? あなたは大変に臆病な男性ひと。気弱な男性ひと。後ろ。後方で待機する事しかできない筈の、か弱い男性ひとでは無かったの、あなたは……」と。


 アイカは独り言を小声でブツブツと呟きながら、自身の紅色の瞳へと沢山の露を為、流しながら流すのだ。


 余りにも彼女は、自身の予想外の事、物を、自身の二つの紅玉の瞳で、見て確認をしたものだから涙を流すのだ。


 全く止まらないくらいに。


 だってさ、彼女、アイカは、自身の本当の主の方へと逃げ、向かおうとしたのだ。


 自分の前を断ち塞ぐ、壁になる敵兵達を、自身の持つ、鋼の矛で薙ぎ倒し、叩き割り、突き刺し、払い除け、退けながら。


 二国の皇帝健太の許へと逃れ、今度こそお腹にいる子と三人で仲良く幸せになるのだと思い、誓っていたのだ。


 だからアイカは、


「うりゃ、あああっ!」、


「わぁあああっ!」、


「退けぇえええっ! 退くのだ、ぁあああっ!」、


「私の行く手を阻むなぁあああっ!」と。


 彼女は罵声を吐きながら後方へと向かい足を進めていると。

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