第195話 戦妃アイカ! (1)

「うりゃ、あああっ! どりゃ、あああっ!」


 アイカは荒々しく咆哮を上げながら、自身の持つ矛を両手で大きく振るい上げ。


 そのまま、健太率いる怪鳥ミュウイ騎兵隊達へと叩き落していくのだ。


 だから敵兵達の頭は次から次へと叩き割れ、潰れていく者達。


 肩の骨や腕の骨を砕かれる者達が、次から次へと増え、被害が増えているようだ。


 だから敵兵達は、久々に見る、自分達の元主──。


 そう此の国の最強姉妹である、女王アイカの戦妃としての、人並み外れた武力と身体能力どころではない。


 彼女の鬼神にも勝る武力、身体能力を目にして恐れ慄き、畏怖……。


 後ずさりを始める者達や後方。


 敵陣があると思われる方向へと、恐ろしさの余り逃げ出す者達も出る程。


 今のアイカの様子は、オーク種族最強の姉妹だと、妹のエリエと共に、世に称えられ謳われていた頃の彼女、その者の様子だから。


 元此の国の漢兵達だった、健太率いる、怪鳥ミュウイ騎兵隊達の者達は、アイカが怖くて致し方がないのだ。


 ましてや彼女は、元自分の臣下の者達へと憤怒! 憤慨! 鋭く睨みつけながら。




「死にたくない者は、そこを退きなさい! 退きなさい! 私の前を塞ぐなぁっ! 塞ぐ者は誰だろうと容赦はしないー!」


元女王だったアイカは、声を大にして咆哮──!


混乱を生じている敵兵に叫び続けながら、彼女の予定通り。


自分の事が恐れ戦いてしまい。


後ずさり、逃げる。


逃走を計りだした、健太率いる怪鳥ミュウイ装甲騎兵隊達の後を追いかけるのだ。


その先には、必ず彼女が愛する男性ひとである、二国の皇帝健太の可愛らしい姿がある筈だからと。


「私は元此の国の女王女王アイカー! 私の道を阻む者は誰だろうと容赦はしない! だから私の為に道を開けなさいー! さぁ、早くー! 早くー!」と。


自分が愛する夫に逢いにいくための道を塞ぐなとで言いたい! 叫びたいような声を大にして叫びながらアイカは、猪突猛進を続けていくのだが。


そんな最中の彼女の耳へと。


「アイカー! アイカ何故君が、そこに。そこにいるのだよぉおおお⁉」と。


彼女が聞き慣れた声──。


それも、彼女が早く聞きたい。


耳にしたい声が、彼女前方ではなく、後方で聞こえるから。


「(何故、あのひとが前方にいるのだろう。いるのだろうか。何故?)」と。


アイカは心の中で思い。


自分自身が予測できなかった事に対して驚愕! 動揺! 困惑しながら。


自身の背、後方へと振り返り。


絶望の現場を見る事になるのだ。



◇◇◇

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