第192話 アイカの思惑(2)

 だから彼女、アイカが首を長く待つのは、ウォンではなく。


 彼女の本当の主である二国の皇帝健太なのだよ。


 そう、アイカが考えた。


 思案をした策、思惑と言うのが実はね?


 ウォンがこの畦道、獣道──。


 このシダ植物の藪、樹木が道まで迫る細道をウォンが敵から逃走、逃げてくる。


 そして彼が、この細い畦道を抜け。


 広い道、場所へと、ウォンが入るか、入り込んだかぐらいの間合い、時間を、アイカが見計らい敵の兵へと攻撃しかけ。


 敵兵を混乱へと陥れ。


 それに乗じてウォンへと追いつき、二人で仲良く逃走──。


 逃避行を続けると言った策が。


 彼女がウォンへと教えた。


 授けた策、計略なのだ。


 でも、実際は違うのだ。


 アイカの策、計略はね。


 まあ、取り敢えず、元彼、婚約者、夫だった男ウォンを逃がす! 逃走をさせる為に。

 健太率いる近衛騎兵隊達へと攻撃をかけ。


 敵兵を混乱へと陥れる事は間違えないのだが。


 アイカは彼に、ウォンへと告げた。


『あなたの許へと行くから』、ではないのだよ。


 彼女が、アイカが、向かう。


 抱き付き甘え、寄り添い。


 永遠に伴侶として暮らしていきたいのは、自身のお腹の中にいる子供の父親である、二国の皇帝健太の許なのだ。


 だから彼の許へと、『助けて! 助けて! あなた助けて! お願い! やっとウォンから逃げる事ができたの。だからあなた助けてお願い』と、嘆願をして。


 二国の皇帝健太から許しを乞い。


 元鞘に収まるのが彼女の目論見でね。


 上手くいけば良いなと、思いながら。


 藪の中に身を潜めるアイカの様子を窺うのだった。



 ◇◇◇

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