第178話 アイカ!(2)

 牢から逃走を図ったウォンが、脱獄してからの時間の経緯を思案。計算をしてみれば、賢い健太は、ウォンがアイカを脱出──。二人で仲良く、この燃える此の国の町。集落の集合体を放置して逃走を図っていることは、彼自身も安易にわかる。悟れることではあるのだが。


 それでも、少ない希望に健太は。二国の皇帝健太は賭けて、アイカがウォンの強引さを振り解き。払い。自身が単独でこの焼け崩れている町を、可愛い。愛する妻、妃がさ迷いながら途方に暮れ。立ち止まっていないかを確認をするために。


 二国の皇帝健太は未だ。自身の妻の名を呼び叫ぶのだ。


「アイカァアアアッ! アイカァアアアッ!」、


「……何処? 何処なのぉっ⁉ 何処にいるのぉおおおっ⁉」、


「……いたら。いたらぁあああっ! 返事をしてよぉおおおっ! アイカァアアアッ! アイカァアアアッ!」とね。


 でも。ああ、無情だ……。


 いくら皇帝健太が自身の声を、喉を嗄らすほど、悲痛な叫びでアイカの名を名指しで呼んでも、何の返答もない。


 まあ、当たり前のことではあるのだけれど。


 だから二国の皇帝健太の顔色は、見る見る変わる。変化をしていくのだ。


 愛する妻にまた健太は騙されたと確信した訳だから。

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