第141話 主、王の前にて……(6)

 回りが! この場にいる二国の少年王健太の妻、妃達皆が! 驚愕! ワッと、騒めき始めるのだよ。 王が! 自分達の白馬の王子さまが狂乱をした! だから気が荒くなってしまったのだとね。と、言いたいところではあるのだが。


「ああ、女王が……」


「長が……」


「姉さまが……」


「アイカ姉が……」


「族長が……」


「アイカが王を……」と。


 誰ともなく呟けば。


「殿を……」


「御方を……」


「旦那さま……」


「健ちゃんを……」


「うちのひとを……」


「あのひとを……」と。


 各自各々が、自身の主、健太のことを各々が呼びながら。


「怒らして、致し方が無い奴だ」と。


 皆が呆れた声、台詞を漏らし始めるだけでね。余り気にした素振りを見せないようなのだ。


 だから二国の王健太が自身の妻、妃の喉元、首を締め続けようが、気にもしない素振り。様子を示す。表すのみでね。他人の夫婦喧嘩には首を挟まないし。意見も告げる。述べる気もないようなのだ。と、言いたいところではあるのだが。


 一人だけ己の主である健太のことを制御! 止めようと試みる者がいる。

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