第135話 束縛(5)

 そう、先程の回想シーンではないが?



 ウォンが女王アイカに対して、自分の物になれと、男の性と発情期を表ざた。表面にだして荒々しく迫った時に。


「あのひと……。健太が、必ず私とウォン、貴方を監視する為に。為にと……。草を! 間者を放って監視している筈だから。直ぐにばれる。ばれてしまう。……だけならばいいけれど? 健太は、貴方の命を……。ウォンの命を絶ちたくて、絶ちたくて仕方がないのだから。これを口実に、貴方に罪をきさせて、罪人に仕立てるつもりでいるに違いない。……ではなくて、絶対にそうするつもり。つもりだから。あのひと……。健太の策に安易に乗っては駄目、駄目よ。ウォン……」と。


 己の元カノ、婚約者……。いや、妻、妃だったと言っても過言ではない女性……。此の国女王アイカが自分へと忠告。するな! と、諫めていた。いたのにも関わらず。ウォンは彼女、妻、妃の忠告を侮り。聞かず。もう一度己の物に。所有物にしようとして失敗……。健太の用意した甘い餌。此の国女王アイカを餌にして、策を弄してきたにも関わらず。ウォンは安易に策へと乗り。嵌められたみたいなのだ。


「く、くそ……。計られたか。あのクソガキに……」と。


 ウォンは先程迄のことを思い出しながら悪態をついたところでもう遅い。遅いのだ。


 だって不倫をしていた最中の絶対的な証拠である裸体のままで、隠すこともしないで仁王立ちをしている女王アイカの背後から。


「貴様等! 貴様達は! 一体、何を! 何をしているのだ?」と。


 怒号! 怒声が吐かれ、聞こえてきた訳だからね。


 そう、二国の美少年王健太の左翼、武の要であるエリエ姫の。勇み凛とした声音と姿、容姿が。ウォンの両目、瞳に映ったと同時に、彼の脳裏には。


「クク……」と、健太の嘲笑い。


 それも健太は、己の口の端を吊り上げ、苦笑を浮かべる。漏らす様子も彼、ウォンは思い浮かべるのだよ。


 だから彼の口からは、「くぅ」と、『つぅ……」、「(歯痒い)」と、悔しがる様子、声音しか漏れてこないのだった。


 でっ、この後二人、此の国女王アイカとウォンは強引に引き離され束縛されるのだ。


 自分達二人の味方、仲間、家族だと思っていた一族の者達の裏切りで。



 ◇◇◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る