第106話 アイカと年下な男の子(22)

 彼は二国の王さまらしくない振る舞いで、「ごめんなさい」、「ごめんさい」の平謝りを続ける。


 黒装束を身に纏う、亜人の年上な女性に対してね。彼──。


 王さまは余りにも若く、幼く、華奢──。少女のような容姿、可愛さを持ち得ているから弱々しく。貧相に見えるとしても。


 この辺りを治める皇帝さまだと呼んでも過言ではない人物なのに。


 なのに、彼は高飛車ではない。ないのだよ。


 そう、たかが間者……。いくら彼女が少年王よりも年上、間者を纏める隊長の身分の物だとしても。


 彼と黒装束の女性は師従の立場──。主と臣下の者になる訳だから。


 身分に差がある。


 またあるにも関わらず彼は、間者の女性に対してへりくだりながら平謝りを何度もおこない。続ける。


 また謝罪を続けながら。いつもの温和、素直な可愛い白馬の王子さまへと平然変貌、可愛く返ることが可能なのだ。


 また、それがね、彼女──。


 黒装束を身に纏うゴブリンの間者の女性には大変に気持ちがいい。いいのだ。


 身分の低い己が、大国の王さまを束縛、傀儡、下僕、性玩具(おもちゃ)にしたような優越感に浸る。酔いしれることができる訳だから。


 またそれ、それがね、どんな媚薬、麻薬を飲み干すよりも歓喜と快楽に陥ることができる。できるのだよ。黒装束を身に纏う女性は……。

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