第3話 友人に知られて、どうしよう!?

「セーナさん、ちょっと隠れてて」

「はい」


 ボクは、セーナさんをクローゼットに押し込んだ。


 玄関で、ユキヤと対面する。


「合コンだったね? 悪いんだけど、イラストの新作が行き詰まっていてさ」

「だったらなおさら、美少女の参考にするためにコンパ行くべきじゃないか? これまでも、そうだったじゃないか」


 そのせいでフラレまくって、今に至るが。

 ボクはどうも、女性を「資料としか見ていない」節がある、


「おっしゃるとおりで。けど今日は……」


 ボクがためらっていると、ため息をつきながらユキヤは返してきた。


「それともなにか? 自分はもう彼女持ちなのでコンパとかいりませんというムーブか?」

「どうしてそんな理屈になるのさ!?」

「スカートが出てる」


 ユキヤが、クローゼットを指差す。


 ボクは慌てて、後ろを振り返った。


「なんだよ! スカートなんて出てないじゃないか!」

「うっそ~」


 ユキヤはおどけてみせる。こいつ……。


「だが、オンナを隠しているのはわかっている。独特の香りがするからな」


 そうか。

 ボクは彼女の初期装備に、『魔物よけの香水』を使っていたんだったな。


「往生際が悪いぞ、ノゾム。何もオレは、お前が抜け駆けしたのを攻めているんじゃない。オンナを隠すってのは、なんかやましいことがあるからだ。相談がしたいんじゃないのか?」


 なんでも、見透かしてくるなあ。かなわないよ。


「セーナさん。もう出ていいよ」


 ボクが言うと、セーナさんがクローゼットから出てきた。


「ごめんなさい。狭いところへ押し込んだ」

「いえ。平気ですから」


 セーナさんが近づくと、段々とユキヤの顔が険しくなっていく。 


「お前マジか! どうやってこんな美人と知り合った!? 撮影会か?」

「違うんだ。実は……」


 ボクは、ユキヤにすべてを包み隠さず話す。


 かつてのゲーム仲間なので、ユキヤの理解が早かった。


「なるほど。わからん」

「ですよねー。ボクもなにがなんだか」


 一番困惑しているのは、ボクだからね。


「しかし、ゲームから出てきたって話は嘘だとは言い切れん。服装とかは、お前のデザインセンスだもんな」

「わかってもらえて助かるよ」

「それで、彼女の処遇をどうしようかと、って話だな?」

「うん。正直、困っているんだ。ボクがお世話するのは当たり前だとしても、大学もあるし、バイトだって」


 セーナさんを養うためにバイトのシフトを増やす手もある。

 どうってことない。

 とはいえ、彼女の行動レベルが日常生活に支障をきたすほどだったら。


「つまり、世間知らずだと大変なことになりそうだと」

「こういう系の作品って、だいたいそんな感じじゃん?」

「メタいな……」


 ボクらが話し合っていると、セーナさんが手を上げた。


「一応、家事スキルはそれなりにありますよ」

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