第2話 美少女がゲームから飛び出してきて、どうしよう!? 

 その子は、セーナさんと名乗った。


 たしかに、ボクの作ったキャラの名も「セーナ」である。


「こんなのしかないけれど、どうぞ」


 セーナさんの気を落ち着かせるため、ボクはコーヒーとおせんべいを差し出す。

 食べられるかどうか、わからないけれど。


「ありがとうございます。いただきます」


 言いながら、セーナさんはおせんべいをかじる。

 よかった。食べられるみたいだ。


「ゲームから出てきたって?」

「実は、ゲームキャラとして振る舞おうとしたら、運営に呼ばれまして」


 それによると、

「中身が男性の女性型キャラは違反ということになって、削除することになりました」

 と言われたそうである。


「それで、ゲーム自体から追い出されました」


 怒りを噛みしめるかのように、セーナさんはせんべいをバリバリと頬張った。


「理不尽だなぁ。ちょっと問い詰めようか」


 せっかく楽しく遊ぼうとしていたのに、あんまりだ。


 しかし、機材はウンともスンとも言わない。


「PCから問い合わせよう」


 しかし、アカウント停止されたボクに、ゲームへアクセルすることはできなくなっていた。メールすら返せない。


 しかし、相手側からメールが来ていた。

 こちらの不手際なので、お詫びとしてゲームの代金を返却したとのこと。


 ネット通帳を見てみると、たしかにお金が返ってきていた。

 VRゲーム用に買った機材の代金まで、立て替えてくれている。

 よほどボクたちには、このゲームからいなくなってもらいたいみたいだな。


「何か、わかりましたか?」

「元の世界には、帰れないっぽいね」

「そうですか」

「向こうには、ご両親とかいるの?」


 セーナさんは、首を振る。


 そりゃあ、そうだよね。ボクがキミを作ったんだもの。


「どうしましょう? わたし、行くところありません」

「だよね。なんとかしないと」


 といっても、どうするんだ? 


 ボクは、セーナさんには出ていってもらったほうがいいと考えた。

 しかしそれは、「ボクが冴えない男子大学生」だから。

 女性を一人養う術がない。生きていくだけでも手一杯だった。


 面倒を見られないからって、放り出すのか? 


 彼女は、何も持っていない。

 何も知らない世界へ追い出しても、のたれ死ぬだけだ。


 保護すべきだろう。


 とはいえ、ペットを飼うのとはわけが違うんだ。

 まして、相手は女性である。


 くそ、こんなときに友人がいてくれたら。

 浮気症のナンパヤローだが、女性関係だと頼りになる。

 ボクも無理やりコンパにつきあわされたりで、女性とある程度話せるようになったし。


 と思っていると、チャイムが鳴った。


『ノゾムいるか? コンパ行こうぜ!』 

「ユキヤ!」


 困ったときの友人だ。

 が、この子を見せちゃっていいんだろうか?

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