015 複眼

「――え?」




 ルークの叫び声を聞いて、寝ぼけていた・・・・・・頭が覚醒して漸くアレンは現状を思い出した。

 



「ッッッ~~~~~~~~~~!!!!!」




 声にもならない叫び声を上げながら、アレンは大慌てで周囲に視線を走らせた。

 もしもアレンがただ悪夢を見ていただけだったのなら、今居る場所はベッドの上で、目に映る光景は、自分たちが借りている部屋だった筈だ。

 しかし、違う。そんな平和な光景では無かった。

 今のアレンが居る場所、それを簡潔に言い表すのなら、それは。



「――繭?」



 或いは蜘蛛の巣、か。

 とにかく、虫が出す真っ白な糸のような物で編まれた謎の空間だ。

 それこそ超、超、超巨大な蚕の繭の中に居ると思えば、イメージがしやすいだろう。

 糸自体が光を発しているのか明るくはあったが、出口の見えない密室であった。

 いや、正確に述べれば、1つだけ焼け焦げた様な穴があったのだが、こうして観察している間に塞がってしまった。

 そんな怪し気で危機感が煽られる不可思議な場所の、床でアレンは倒れていたのである。

 そして、倒れていたのはアレンだけでは無い。



「母さんっ――!」



「――――」



 アレンの直ぐ近くには、アレンと同じ様に虫の糸の様な材質で出来た地面に倒れ伏すエレノアの姿。

 先ほどまで見ていた夢?の映像と違って、怪我こそしてはいなかったが、代わりに意識を失っていて、アレンの声に反応しない。




「アレン。一体何があった?」



 そして、意識を失っているエレノアと、目を覚ましこそしたものの上手く体が動かず立ち上がれないアレンの2人を庇う様に背にし、同時に身の丈ほどもある大剣を構えながら、ルークが厳しい表情で立っている。

 その口から、出て来たのは現状への疑問。

 



「いきなり、街に廃呪カタラが」



「ああ、そこまでは分かっている。だが、少し距離を離された瞬間に、お前たちはこんな場所に閉じ込められていた」



 そうして、アレンは今日起きた本当の出来事を思い返す。




 まず、ルークが次に住むことになる街へ先に移動して、暫くの間アレン達と離れ離れになった。

 そこで、その間クリスも自分たちと一緒に暮らそう。と言う話になって、今日アレンは、エレノアと一緒にクリスを迎えに行こうとしていたのだ。

 そして2人で待ち合わせの場所に向かっていた時、突如として街の内部から巨大蛾の廃呪が現れて、人を襲いだした。

 そう。それは、真実だったのだ。

 しかし、夢とは違いエレノアと2人だったアレンは、廃呪を退けながらクリスと合流しようという話になって、大急ぎで移動していたのだが…………。




「そこでアイツ・・・が」



「そうか……」



 そう言って、アレンは前を見た。

 ルークは話を聞いている最中もずっと視線はそちらにあった。




「あらあら。そんな熱い眼差しを貰うと、照れてしまいますわ」




 そこには1人の・・・・・・・女が居た・・・・



 艶やかなの長髪。

 整った顔立ち。

 抜群のプロポーション。

 鮮やかで派手でそして露出度の高い紅いドレスに身を包んだ女。


 美女と、そう言い表しても過言は無いだろう。

 その顔も、その身体も色っぽくて妖艶で、街を練り歩けば幾らでも男を捕まえられるに違いない。



 ――ただ1点・・を気にしないのなら。



 女の体には1箇所だけ、その美貌を台無しにする様な、誘われて期待を持って付いて行った男たちが悲鳴を上げて逃げ出す様な、そんな部分があった。



 それは眼。より正確に言えば眼球。



 目つきが悪いなんてレベルの話ではない。

 女の眼球は人間の物では・・・・・・無かった・・・・

 本来正常な物があって然るべきその場所は、真っ赤でかつ小さなレンズの様な物の集合体で構成されている。


 つまり女の眼球は、昆虫の複眼だった。



 なまじ他のパーツが整っているだけに、そこだけが異様に目立ち、そして不気味であるとしか言いようが無い。




「俺と母さんの前に現れたアイツの、あの眼をみたら意識が遠くなって、後は倒れて夢を見ていたんだと思う……」



 複眼女に出会った後は、先ほどまで見ていた趣味の悪い悪夢を見て、そうして今に至るという訳だ。

 実際何があったか説明すると言っても、アレン自身、今日の経緯はそれ以上説明出来そうにない。



「――【邪視】だ」



「邪、視?」



「瞳を通じて、相手の精神に変調を与え、幻覚や幻聴を生じさせる能力だ。基本的に一部の廃呪に見られる力だが……真逆、人間が扱うとはな」



「じゃあさっきのは夢じゃなくて…………」



「ああ。幻覚でも見せられていたんだろう。体内で魔力を回せ、アレン。それで大分マシになる筈だ」



 目の前の女による攻撃であった。ルークの説明が正しいのなら、そう考えるのが妥当だろう。

 アレンは、ルークの言う通り自分の体の中で、魔力を操作する。

 未だ、体は満足に動かないままではあったが、それでも大分楽になった。



「うふふ。バレてしまいましたか。まあちょっとした悪戯の様なものです」



 複眼の女はアッサリと、それでいてとても愉しげに、自分がアレンに幻覚を見せていたことを白状した。

 その姿に全く悪びれる様子は無い。



「人の甥に一体なにをしてくれている」



「くふっ、申し訳ございません。アレンさんと久方ぶりの再会・・でしたので、少々悪戯心が騒いでしまって…………」



「再会、だと?」



「ぁ――」



「アレン?」



 女のその言葉。そして何よりその複眼を見て、アレンは思い出した。

 そうだ。自分がこの女と会ったのは、初めてのことでは無い――と。




「あ、あの時。ぼ、俺が【呪い憑き】になった夜っっ。あの眼を確かに見てっ――!!」



「なんだと!?」



 アレンが呪いに身を侵され一夜にして輝かしい未来を絶たれた事件については、ルークも当然聞き及んでいる。

 その原因、或いは下手人が未だ不明なままであることも、また。



「――貴様」


「ああ、あの時は自己紹介も出来ず、どうも申し訳ございません。わたくし、ニフト、と申します。どうかお見知りおきを」



 アレンの怯えた視線に、ルークの強く睨みつける視線。

 その両方ともを意にも返さず、それどころか優雅に一礼すらして、複眼の女――ニフトは、自己紹介を行った。



「最初からアレンの事が目的か」



「そう思って下さって結構ですわ」



 聖印を持ち、大きな才能にも恵まれているアレン。

 その価値はとても大きい。

 故に、アレンの身柄が目的である事は、まず間違いないだろう。

 身柄をどのように使おうとしているかは不明だが、まあ碌な事ではあるまい。



「…………随分と素直に認めるんだな」



「私、あなた方とは仲良くしたい、とそう思っているのですよ?」



「そうか。それならアレンを狙っている理由を全て話し、ここで何もせずに帰り、ついでに自首してくれ。そうすれば、親友とでも呼んでやるさ」



「それは。それは。随分、魅力的な提案で心躍りますわ。ですが、私もさるお方に仕える身でして、そこまでの裁量権は無いのです。よって断腸の思いながら、断らせて頂きますわ」



「それなら仲良くは出来んな」



 大剣を握るルークの手に、更なる力が加えられる。

 辺りに戦意が充満して、爆発寸前の火薬庫の如き緊張感が満ち溢れる。



「まぁっ!でもそう言った展開も嫌いではありませんわ。ただ、その前に色々と喋ったお礼に、浅学な私に1つだけお教え下さいます?私、貴方が居ない隙を狙って事を起こしたつもりだったのですけど、一体どうして気付きましたの?」




 怪しい女の質問ではあるが、確かに。と両者の会話を聞いていたアレンは思った。

 そもそも、ルークは別の街へ移動していた筈なのだ。

 つまり、今ここに居るのは可笑しい。



 その疑問に、ルークは肩を竦めて答えた。




「なに。小さなお友達――小鳥が注意喚起の囀りで教えてくれただけの事だよ」




「はぁ。真面目に教えてくれる気は無し、と。残念ですわ」

 

 


 茶化した様に語るルークの言葉を、ニフトは態度通りの出鱈目、と認識した様だった。

 しかし、傍で聞いていたアレンの意見は違う。

 アレンに交友関係の制限を強いているからか、ルークやエレノアは、自身も人付き合いを最低限に留めている。

 よってこれまでの友人関係などはともかく、この街における知り合いの数は、アレンとルークの間でそこまでの差が無い。

 そんな中、小さなお友達などと聞けば、思い浮かぶのは――。



 ――まさか、クリスが?でも、なんで?



 自分の最近出来た友人クリスが、ルークに注意を促したのか?とそう予想したアレンの思考の流れは、決して不自然な事では無いだろう。

 しかしながら、その予想が当たっているにせよ、外れているにせよ、今この場で考える話では無いだろう。

 それこそ、全てが無事に終わった後に、ルークからゆっくりと話しを聞けば、それで済む話だ。

 今、アレンに求められているのは、そんな平和な未来に到れる可能性を少しでも上げるために、体の自由を出来るだけ早く取り戻すこと、そして伯父ルークの戦いをしかと見届ける事だ。



「はぁっ……。仲良くしていただけないとなれば、仕方がありませんね。――――暫しご退場願いましょう」



 そう言うが早いか、ニフトの体の周囲から黒いモヤの様な物が溢れ出した。

 それは大蛾の廃呪が出していたものと同質の粉。即ち鱗粉であった。

 その鱗粉が、撒き散らされるというより、充満すると言って良いほど空間全体に放たれ、最早ニフトの周りは、黒色の濃霧で覆われているようだった。

 そしてその不吉な霧が全てルークへ向かって、勢いよく殺到した。

 


「毒粉かっ!?」



「ハ・ズ・レ♪」



 廃呪の鱗粉は強い毒性を持つ事が多い。

 よって、ルークは鱗粉の霧が自分たちの方へと放たれた瞬間、自身の魔力を操作し、自分とアレン、そしてエレノアに対状態異常の魔法を無詠唱で付与した。

 歴戦の戦士という前評判に違わぬ咄嗟の判断と言える…………が、この場においてその行動は功を奏さなかった。

 鱗粉の濃霧は、毒と言う間接的な攻撃方法では無く、もっと直接的な――具体的に述べれば、ルークと接触した瞬間に爆ぜた・・・



「伯父さんッッ――!!」



「【爆炎香】…………とでも呼びましょうかね」



 ルークが立っていた場所を中心として大きな火柱が立ち昇る。

 その炎の色は、人の血の色。

 ただし、鮮血の鮮やかな紅色では無く、体外に出て何時間も経った後の血のどす黒い赤であった。

 ルークの近くにいるアレンには一切の熱や衝撃が加わっていなかったが、それを持って大したことの無い攻撃だと結論付けるのは早計だ。

 寧ろ、全ての威力と熱が1点に集中している、と見るべきで、事実現在ルークがいる地点に対しては、現代兵器による爆撃もかくやと言った衝撃が加わっていた。

 少なくとも一般的な成人男性1人如き、跡形も無く消し去ってしまう威力があることは疑いようも無い。



「――っ!?」



 だがしかし、とぐろを巻いて轟々と燃え盛る血炎けつえんの竜巻の中。

 どす黒い赤を切り裂いて、オレンジ色に近い明るい赤の炎の一閃が、ニフトへと放たれた。

 それはさながら、ルークが持っていた大剣を横に薙いだ軌跡を炎で形にすればこうなるであろうという烈火の鎌鼬。

 焼却と斬滅を望む緋の一閃がニフトの顔面を目掛け、空気を燃やし尽くしながら高速で飛翔する。

 すんでの所でその一撃に反応したニフトだが、完全に躱しきる事が出来ずに、頬に大きな切り傷が刻まれた。

 切断と同時に傷口が焼かれて出血が発生しなかったのは、果たして良かったのか、悪かったのか。

 どちらにせよ、かなりの痛みがあった事は間違いない。



「【防壁】に【付与】ですか?あはっ。咄嗟かつ無回路、詠唱破棄で大した物ですね。ですが、それはさておき女の顔を躊躇なく狙うなんて……それではモテませんよ?」



 炎の竜巻が止む。

 その中から、無傷のルークが現れた。

 そして、その手に構えられていた大剣の刃が、かつてアレンが炎の魔法で剣を創った時の如く、赤熱して紅く発光している。



「さて、な。生憎それは否定しかねるが、まあ安心しろ。どの道、人の皮を被った化生を女扱いする気は――――無いッッ!!!」



 そう叫びながらも、ルークの手は常に動いていた。

 手に持った大剣を高速で振りぬいて、先の様な、飛ぶ炎の斬撃を放つ。

 更に今度は1発だけに非ず。

 横薙ぎ、縦薙ぎ、斜め薙ぎ、それに突き。

 人智を超えた速度を持って、絶えず放たれる斬焼ざんしょうの熱線。

 


「お生憎ですが、肌を焼く趣味は無いものでっっ」



 こんな物にクリーンヒットしてしまえば、肌が小麦色どころか炭色になってしまう、とニフトは華麗なステップで炎刃を躱していく。

 ひらりひらりと、夕焼け色の炎を避ける様は、まるで舞踏の如く。


 ルークが放つ焔の太刀風は、威力・速力ともに優れているが、最も特筆すべき点は、それを放っているのが歴戦の勇士であるという事。

 即ち、やたらめったらと阿呆の如く適当に振るっている訳では当然なく、しっかりとした計算の下、相手の回避を潰しながら放たれている。

 つまり、これは焦熱の檻だ。

 入れば最後、消し炭になるまで出てこれない。



ゥ」

 


 余裕を持って攻撃を躱していたはずのニフトから、その余裕がいつの間にか消え去っていた。

 徐々に回避がギリギリに成り始め――遂には、炎の刃が掠り、その身を少しづつ焼き切られていく。

 華麗な舞踏が、血と暴に満ちる武闘へと変じていく。



った――!!」



 そうして遂に茜色の刃がニフトの体を捉えた。




「■■■■■■■■――!!!!」



 人の物とは思えぬ断末魔が辺りに轟いた。


























「…………………………チッ。これで決まるとは思っていなかったが、またふざけた手段を使ってくれた物だ」




「楽しい、楽しい踊りを、こんなに簡単に終わらせてしまったら、損でしょう?」



 あわや真っ二つか、と思われたニフトだが、全くの無事であった。

 それでは、響いた断末魔は一体?と思うかもしれないが、簡単な話である。

 人の物とは思えぬ断末魔も何も、そもそも人の物ではない・・・・・・・断末魔・・・であったと言うだけの事。



 ニフトの眼前には、焼き切られて真っ二つとなった、大蛾の廃呪の姿。

 コイツが、代わりに攻撃を受けたことで、無事に済んだというのが、事の真相であった。

 ではそもそも何故イキナリ廃呪が出現したのか、その答えも直ぐに分かることとなった。



 ニフトが再び先程の鱗粉の濃霧を辺りへと撒き散らす。

 振り撒かれたそれは、今度は爆発すること無かった。

 しかし、鱗粉が寄り集まり、霧の中より幾体もの大蛾の廃呪が現れだす。

 その量は莫大で、白繭の天蓋が僅かな間で巨大蛾で埋め尽くされた。



「どういった絡繰りかは知らんが、街の廃呪はやはり貴様の仕業か」



 廃呪除けの結界が張られている中で、街の内部に廃呪が発生した理由。

 その答えが目の前の光景なのだろう。



「あら。大して驚いていない様ですね。衝撃の展開を演出したつもりだったのですが」



「抜かせ。関係ない、と思う方が寧ろどうかしている」



 本来起こり得ない街の混乱に乗じたニフトの凶行。

 何かしらの繋がりがある、と思うのは当然の予想だろう。

 最もその繋がりが、此処まで直接的な物である事には多少の驚きはあったが、それをルークが正直に見せる筈も無し。

 よって精神的動揺による、ルークの戦闘能力の低下は皆無であった。



「ですが、多勢に無勢ですわ――――よっ!!」



 天井を埋め尽くす廃呪の群れが一斉にルークへ向かって殺到する。

 しかもそれだけでは無く、鱗粉の霧も同様に近づいている。

 廃呪の処理に手間取えば、諸共に爆撃されるであろうことは、想像に難しくない。

 一見、絶体絶命のピンチ。

 されど、ルークの表情に焦りは無い。



 何故なら、彼の方も準備は済ませている。

 

 

「【種火リノンクロスティ】――【点火アナフレクシィ】――【燃焼カーフシ】」 



 火の魔法回路の作成――それも3段階目まで。

 ルークの体内で、魔力が高速で純化していく。

 より上位の回路の作成もルークならば可能であったが、それをしなかったのは決して手を抜いているからではない。

 上位の体内魔法回路の作成は、諸刃の剣だ。

 魔法の威力・質ともに上昇するが、その分自身のエネルギーを素早く消費していくため、継戦能力は極めて落ちる。

 故に、持続的な戦闘活動を踏まえた場合、この3段階目の回路がルークには最も適していた。



「【火炎津波フロガプリミラ】――燃え尽きろ」



「――!!」



 そして放たれるは、読んで字のごとく炎の津波。

 溶岩めいた炎が空中を覆いつくしながら、廃呪の群れを飲み込んでいく。

 それに対抗する様に、ニフトも鱗粉を廃呪ごと爆発させる。



 一連の戦闘行動を元に、ルークは彼我の戦力差を大体は把握した。



 ――コイツニフトは、俺より格上か。



 楽観的な思考を許さぬ冷静なる戦士の計算が、自分の力量より敵対者の力を上においた。

 感じられる魔力量。廃呪の力を使い、廃呪そのものを召喚するという、普通の人間では有り得ぬ不可思議な戦闘方法。そして確かに感じられる力量。

 それらを総合して考えれば、残念ながら自らより勝っていると、認めざるを得ない。


 そんな結論に達しているルークだが、ならば諦めているのか?

 いいや、勿論。否、である。



 ――勝てる・・・



 希望的観測などでは無く、確かな勝算がルークの瞳には見えていた。

 

 炎と爆発の拮抗が終わり、その中からそれなりのダメージを受けたニフトの姿が現れた。


「どうした、随分と戦い方がぎこちないな?」



「私、スプーンより重いものを持ったことのない、手弱女でして……。こういう事には慣れていませんの」



「ほざけ」



 表面上はふざけているニフトだが、その体捌きなどは戦闘者としてのそれだ。

 素人が与えられた力を適当に振るっている様な不安定さは感じられず、積み上げた鍛錬の跡が見て取れる。

 だが、それでいて戦い方にぎこちなさが見られるのも、また、真実だ。

 考えられる可能性はパッと思いつく限り2つ。



 ――数年以上のブランクか、新たな力に目覚めたばかりか、そのどちらかか?



 前者は、怪我から復帰したばかりの場合や、一線を退いて久しい場合等。

 後者は、まだ自分の戦い方が定まっていない新人等。


 ルークの長い冒険者生活の中で、そういった人物たちが、今のニフトと同じ様な状態になっているのを見たことがあった。

 とはいえ、理由其の物は現状どうでも良い。

 重要なのは、ニフトの戦い方に確かな隙が見られるということ。

 例えカタログスペックが自らより上の相手でも、その力を十全と扱えていないのなら、やり様は幾らでも存在する。



 勝てる。いいや、勝つ。



 自らだけではなく、妹や甥の安全もかかっているのだから、とルークは戦意を新たに、眼前の敵を睨みつけた。

















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